イベント&キャンペーン
報告:スリランカ女性への自立応援プロジェクト
IMADRとIMADRアジア委員会は、内戦以降も厳しい生活実態にあるスリランカ北部・南部のマイノリティ女性たちの自立プロジェクトを応援するために、2025年10月、クラウド・ファンディングを通して、日本からの応援を呼びかけました。それによりいただいた寄付をもとに、現地でプロジェクトが開始され、このたびその報告が届きました。

2025年12月〜2026年5月までの6ヶ月間、スリランカ北部に位置するジャフナと、南部のウィーラケティヤで現地NGOとの協働のもと、女性の経済的エンパワメント事業を実施しました。2020年のコロナ禍と経済危機により、物価は2倍以上に上がり、1日の食事の回数を減らすなど、厳しい日々を過ごしています。
本事業は、女性たちが経済的に自立して安定した生活を送れるよう、①作物の栽培、②養鶏 、③ごま油づくりの職業訓練を行いました。
◼︎作物の栽培
ジャフナとウィーラケティヤで、女性が生産者としても主体的に活動できるよう支援することを目的に、女性世帯主の家庭、高齢者、低所得者世帯、合計130名の女性に対し、以下のことを行いました。

・野菜の苗、種子、栽培資材、栽培袋の提供
・土壌づくりや種まきに関する実地研修
・苗の管理、有機堆肥の作り方、節水、害虫対策の技術支援
・気候変動の影響に対応できる排水対策、マルチング、地域の環境に適した作物の選定に関する研修・訓練
・定期的なフォローアップ、モニタリング
裏庭や空き地、袋栽培を活用し、なす、唐辛子、オクラ、葉物野菜、薬用植物、果樹など、10種類以上の多様な作物を栽培しています。
✏️効果
栄養改善
参加者の90%以上が収穫した野菜を定期的に消費し、食事の多様性が増し、栄養改善につながりました。以前は、新鮮な野菜を入手することが難しかった参加者も、日常的に野菜を食べられるようになり、量と質の両面で改善が見られました。
経済的な効果
参加者の多くは、市場で食料を購入する回数が減り、毎月の食費が30%〜40% 減少しました。また、数名の参加者は、余った収穫物を地域内で分け合ったり販売したりするようになり、小規模ですが、収入を得る機会が生まれました。これにより、生計への効果だけでなく、女性が経済的に貢献できるという自信の向上にもつながりました。

持続可能な農業、変化の担い手へ
持続可能な農業に関する知識と実践的なスキルの向上とともに、主体性、自立心、自信を育むことにつながりました。自ら工夫を凝らし、家庭菜園の拡張や新たな作物の導入をしたり、得た知識を近隣住民や家族と共有したりするようになりました。こうした日常の中での知識の共有は、事業参加者を超えてその効果をさらに広げることにつながっています。
◼︎養鶏
本事業は、ジャフナで、安定した収入と食料・栄養状態の向上を目的とし、強制失踪で夫を失い、安定した収入がなく日々の生活費を賄うことが困難であった女性1名に対し、以下のことを行いました。

・20羽の鶏のひなと小屋づくりの資材の提供
・給餌器と給水器の設置
・小屋づくりの技術支援
・餌やりのスケジュールや衛生管理、病気の予防、作業記録を含む養鶏に関する技術支援
・定期的なフォローアップ、モニタリング
鶏小屋は、安全性や健康、生産性の向上を確保する一方、病気のリスクや維持管理コストを最小限に抑える設計となっています。モニタリングで訪問した際には、鶏は健康で、新たな環境に適応していることが確認されました。
✏️効果
栄養改善と食費の減少
タンパク質が豊富な卵を、日々の食事の中で取り入れられるようになり、栄養バランスの改善につながりました。また、食費が減るとともに、地元コミュニティ内で、卵を売ることで、副収入を得ることにもつながりました。
自信、起業力の強化へ
養鶏事業の運営を通じて、実践的な経営スキルや意思決定能力を身につけ、家計を支える力が強くなりました。この取り組みは、農村地域の女性にとって、小規模の養鶏が有効な生計を立てる手段となり得ることを示しています。事業に参加した女性は、今後、養鶏数を増やし、生産能力を高めながら、より持続的な商業的事業として発展させていくことに関心を示しています。
◼︎ごま油づくり
ジャフナで、既存の小規模事業を強化し、持続可能な収入を実現するとともに、伝統的な農業・食品加工の手法を維持・継承することを目的として、実施しました。
本事業の対象者は、ごまの栽培・搾油をしたことがあり、事業拡大において課題に直面している女性起業家1名です。彼女は、若くして夫を亡くし、最近、ごま油づくりを始めました。生産コストの高騰や良質な原材料の入手が困難であることに加え、不十分な設備や市場へのアクセスの制限により、生産拡大が難しく、思うように売れていませんでした。そこで、本事業では、以下のことを行いました。

・ごまの種の提供と彼女が参加しているごま油づくりグループの搾油機の整備
・ごまの栽培・収穫・加工に関する技術支援
・付加価値を高める取り組み、パッケージの改善、商品の見せ方の工夫、事業計画の強化といったマーケティング研修
・定期的なフォローアップ、モニタリング
ごまは、環境にやさしい農業手法を用いて栽培され、成熟期に収穫されます。収穫後、洗浄・乾燥・加工の工程を経て、伝統的な搾油方法により高品質なごま油が作られます。最終製品は、ろかされ、容器に詰められ、ラベルが貼られ、地域の市場へ流通します。
✏️効果
市場価値と品質の向上
生産効率や市場価値、品質の向上につながり、小規模事業の運営に対する自信を深めるとともに、生産計画、品質管理、販売戦略に関する知識をつけ、収入向上や家計の安定につながりました。
伝統的な知識の継承
地元で生産され、自然由来の製品を促進するとともに、ごまの栽培や搾油に関する伝統的な知識の継承につながりました。
女性主導の小規模事業モデルの構築
新たな生計を向上する手段を取り入れるのではなく、参加者がすでに取り組んでいた事業を強化することで、これまでの経験やスキルを活かした事業拡大を支援し、事業の継続と発展に向けた基盤を強化しました。これは、他地域でも応用可能な女性主導の小規模事業モデルです。
今後も、尊厳、社会正義、経済的レジリエンス、コミュニティの持続的な健全性を促進する取り組みを続けていきます。ここで報告した効果が、スリランカ各地の不利な立場にあるコミュニティのエンパワメントに向けた継続的な協働と支援の促進につながることを期待いたします。私たちの挑戦を支えてくださり、ありがとうございます。