4. なぜ包括的であるべきなのか

2000.11.04

 日本には、差別に対して「包括的」に取り組む法律はありません。今、あちこちから包括的反差別法を求める声が聞かれます。なぜ必要なのか、どのような法律が求められるのか、2024年6月IMADR主催の包括的反差別法実践ガイド・ワークショップでの林陽子さんの講演を手掛かりに、以下、考えてみます。

まず、包括的反差別法の「包括的」とは、具体的にどのようなことを意味するのでしょうか?

 1つ目は、差別禁止事由を限定しないことです。人種、年齢、性的指向、障がい、社会的身分など、さまざまありますが、それに加え、「その他の事由を含む」とし、差別事由の限定をしないことです。

 2つ目に、差別が起きる現場を問わないことです。公的・私的空間を問わず、保健、教育、労働、住宅、移動手段、金融を含むすべての領域におけるすべての行為者による差別を対象とします。

 3つ目に大事なことは、差別の禁止を形式的なものにしないことです。間接差別や複合差別といった差別の多様な形態に対応できるようにすることが重要です。同時に、差別が起きないよう、アクセシビリティの確保や「合理的配慮」が必要です。さらには、平等を確保するための特別措置をとることで、差別の防止を図ることが求められます。

 4つ目に、被害が実際に救済され、再発防止の仕組みを作るということが必要です。禁止規定は、法律の中の一部に過ぎません。禁止するだけでなく、救済、教育、啓発といった様々な取り組みがあって初めて、差別をなくしていくことができます。

では、なぜ今、「包括的」反差別法が必要なのでしょうか?

  差別の理由、現れ方、それがもたらす影響やその範囲、これらは時代とともにより複雑で多様になってきました。個別の差別問題への対応だけではなく、現代世界は「包括的反差別法」を必要としています。

差別は複合的で構造的な形をとる
 差別は一つの事由だけで起きるとは限りません。複数の差別事由が重なっていることも多く、個別法、単一の差別禁止事由を見ているだけでは対処できない場合があります。

差別は思いもよらない形態で現れる
 差別は、これまで想定されなかった新しい形で現れることがあります。そのため生活のあらゆる面での差別をなくすためには、個別法だけでは対処しきれない「空白地帯」をなくす必要があります。

国の基本となる共通ルール
 あらゆる差別への対処として、国の基本となる法律、共通ルールが必要です。

効果的な取り組みの実現
 各国における反差別の実践で、共通して効果があったものがあります。例えば、ボジティブアクション、立証責任の転換、被害者救済へのアクセスの確保です。こうした取り組みを共有し、国内で実現していくことが重要です。

差別の禁止、司法へのアクセス、救済機関を連結
 「何が差別にあたり、どのような行為が禁止されるのか」といった差別禁止の実体規定だけでなく、司法へのアクセス、平等機関(救済機関)を連結させることも重要です。法律で差別を禁止するだけでなく、実際に被害にあった際に救済を受けられ仕組みを整える必要があります。

個別法と組み合わせる
 もちろん、個別法も必要です。しかし、包括的反差別法と個別法を組み合わせることで、それぞれの差別への対応に相乗効果が期待できます。