女性差別撤廃委員会は89会期(10月7日から10月25日)で、一般勧告 40 「意思決定システムにおける女性の平等かつインクルーシブな代表」を採択しました。一般勧告は、条約締約国(現在182カ国)が国内で条約を実施するうえでの解釈を助けるなどの目的で女性差別撤廃委員会が作成するものです。女性の代表、とりわけ、マイノリティ・コミュニティの女性の代表が確保されることは、誰一人取り残さない世界の実現に欠かすことはできません。以下、内容の一部を抜粋し、紹介します。
一般勧告40は以下より構成されています。PDF版はこちら。
I. 50:50 パリティへのロードマップ
II. ゲームチェンジャーとしての意思決定システムにおける女性の平等かつインクルーシブな代表
A. 平和と政治的安定
B. 持続的でインクルーシブな人権ベースの経済
C. 気候変動と環境的災害リスクの軽減
D. 人工知能の台頭を含むテクノロジーの発展
E. 多国間システムとガバナンスの変革と持続可能性
III. 「意思決定システムにおける平等かつインクルーシブな代表」を実現するための7つの柱
IV. 「意思決定システムにおける平等かつインクルーシブな代表」を実現するための規範的枠組み
V. 「意思決定システムにおける平等かつインクルーシブな代表」を実現するための締約国の義務
1. 一般的義務
A. 無差別と実質的平等の確保
B. 交差性と多様な背景をもつすべての女性
C. ジェンダーステレオタイプの撤廃
D. 男性と対等な条件での、多様な背景を持つすべての女性の代表
E. エンパワーメントとリーダシップに向けた教育
F. 女性に対するジェンダーに基づく暴力やハラスメントからの自由
G. 意思決定における女性の権利団体の代表
2. 具体的な義務
A. 政治的・公的意思決定におけるパリティ
(1)選挙権
(2)被選挙権
(3)政府の政策立案・実施に参加する権利
(4)公職に就き、あらゆる公的職務を遂行する権利
(5)非政府系、公的あるいは政治的組織に参加する権利
B. 国際的な意思決定におけるパリティ
(1)国際レベルで政府を代表する権利
(2)国際機関の業務や交渉におけるパリティ
C. 平和と安全保障に関する意思決定におけるパリティ
D. 経済に関する意思決定におけるパリティ
E. 意思決定にアクセスするための前提条件としての私的領域における女性の権利
VI. パリティ・システムを実現するための締約国の義務に関する説明責任およびモニタリング
VII. パリティ・システムを確保するための国際社会の行動
その中で、定義やパリティの必要性、具体的な行動が以下のように示されています。
「意思決定システムにおける平等かつインクルーシブな代表」とは?
「意思決定システムへの平等なアクセスと、意思決定システム内での平等な権力という点で、多様な背景を持つすべての女性と男性の割合が同等であること」と定義されています。
50:50 パリティはなぜ必要なの?
「意思決定システムにおける女性の割合を30%にするという以前の目標は、男女間の不平等が正当化されるというメッセージを含んでおり、女性差別撤廃という条約の中核的な目標と相容れないものであり」、「意思決定は、女性と男性が50%ずつの割合で、両者の利益を同等に考慮することによって初めて現実的でダイナミックな意味をもち、永続的な効果をもたらします」。
よって、男女間の50:50 パリティは、公共、民間、政治、経済、デジタルの空間における意思決定システムにおいてすべての女性の平等な参画を確保するために必要です。
平等の達成なしに、国家や国際社会が、特に平和、政治的安定、経済的発展、気候変動、人工知能のような技術の進歩に関連する国家的、地域的、世界的な課題に効果的に取り組むことはできません。
「意思決定システムにおける平等かつインクルーシブな代表」における7つの柱って?
世界のあらゆるところで、家父長制は女性の意思決定システムにおける平等でインクルーシブな代表を構造的に妨げているという確認のもと、「意思決定システムにおける平等かつインクルーシブな代表」を確保するためには、男女のいずれか一方の劣等性もしくは優越性の観念、または男女の固定的役割に基づいた偏見や慣行を撤廃すること(条約第5条(a))が必要です。そのために以下の7つの柱が提示されています:
A. 意思決定システムにおける男女間の 50:50 パリティを出発点とし、普遍的規範とすること。
B. パリティを通じて、効果的な若者のリーダーシップを確保すること。
C. 交差性と多様な背景をもつすべての女性の包摂を確保すること。
D. 領域横断的なパリティを確保する包括的アプローチを行うこと。
E. 意思決定システム内での女性の対等な権力と影響力へのアクセスを確保すること。
F. 固定化され、社会に浸透している性役割分担を変えるために、構造的変革を行うこと。
G. 意思決定システムにジェンダーの視点を取り入れるため、女性組織も含む市民社会組織の代表を確保すること。
「意思決定システムにおける平等かつインクルーシブな代表」を確保するために必要なことは?
上述したような代表性を確保するために、委員会は以下(一部)のことを締約国に呼びかけました(委員会が採択時に出したプレスリリースより抜粋):
<平和と安全保障>
・平和と安全保障の取り組みにおけるパリティの重要性を強調し、締約国に対し、紛争・危機の防止、平和構築のプロセスにおける女性の平等な代表性を確保すること。
・ジェンダーに対応した平和アジェンダを採用し、地球安全保障の枠組みに一般勧告40を組み込むこと。
<政治参加とリーダーシップ>
・選挙と任命におけるジェンダー・パリティを確保する法律を制定し、議会やその他の意思決定機関におけるリーダーシップ・ポジションのパリティを確保するルールを採択する責任があること。
・すべてのレベルでジェンダー・パリティの達成するための改革を行うために、議会、官公庁、市町村議会のジェンダー監査を行い、ジェンダー対応と責任分担を検討すること。
<ジェンダー・パリティに基づく持続可能でインクルーシブな人権ベースの経済>
・給与、税制、規制を含む、女性の参画を妨げるあらゆる法的・実質的な経済的差別を撤廃することで、経済的な意思決定における完全な自立性を確保すること。
・テクノロジーやエネルギー、情報など金銭および非金銭的資源への平等なアクセスを確保すること。
*一般勧告40 (未編集バージョン)はこちらから
【翻訳・抄訳 反差別国際運動(IMADR)】