2024.08.19

【要約報告】人種差別撤廃委員会第113会期 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(UK)審査

人種差別撤廃委員会のイギリス審査が8月13日・14日に行われました。委員会は最近の人種差別暴動を調査した国家当局の迅速な対応について言及し、「ウィンドラッシュ」事件の被害者への補償、移民法改正、ヘイトクライム、ヘイトスピーチ、マイノリティコミュニティへの対応などについて質問しました。

イギリス審査の報告者であるGün Kut 委員は国家当局の迅速な対応について言及した。また共同報告者のStamatia Stavrinaki 委員は「サウスポートでの殺人事件に続いて起きた極右による人種差別暴動の被害者に思いを寄せる」と述べ、今、この時代に希望をもたらす大規模な反人種主義運動に敬意を表した。

Kut 委員は、「1973年以前に旧英領の中米諸国からイギリスに移住したいわゆるウィンドラッシュ世代の子どもたち数百人が、2018年、誤って拘留されたり、医療を拒否されたり、国外退去された」と指摘した。現在、ウィンドラッシュの補償を受けることが難しいと報告されているが、この問題の解決はどうなっているのかと尋ねた。

Stavrinaki 委員は、複雑なイギリスの移民法が深刻な懸念を生み出しており、奴隷や人身売買の被害を名乗りでる人びとの人権へのアクセスを拒否し、移民に対する人種差別を助長するものであると述べた。イギリスはこの法律に関して最高裁が出した決定を実行し、すべての移民法を国際人権基準に沿って改正するつもりはあるのかと問うた。

これらの質問に対し政府代表団の Elizabeth Mary Hawkins 団長は、政府は「ウィンドラッシュ問題の不正義を正すことに尽力して」おり、「該当者が恩恵を受けられるよう引き続き補償を行っていく」と述べた。

さらに委員会はヘイトクライムに関して次のように言及した。「中東で紛争が起きて以降、反イスラム、反ユダヤの感情が劇的に高まっている、 政府はヘイトクライムに取り組むための措置を講じており、ヘイトクライム法案の起草を進めている、北アイルランドにおける威嚇活動と準軍事組織の存在は民族的マイノリティが人権救済を求めることをより困難にしている。さらに、人種差別的ヘイトクライムがスコットランドにおいて大きな問題となっており、イギリスのロマやトラベラーズに対する否定的な感情がますます強まっているようである」、委員会はこれらに対する政府の対応を尋ねた。

委員会は、また、ヘイトスピーチについて言及した。Stavrinaki 委員は「ヘイトスピーチはマイノリティの表現の自由と私生活の権利に影響をもたらす」と述べた。別の委員は「最近起きた暴動はソーシャルメディア上での誤情報の拡散によって扇動された」と指摘し、防止の措置について尋ねた。また、「数人の政治家はムスリムに関して扇動的な言動を繰り返している」とし、政府はどのようにしてこれらの政治家の説明責任を追及するのかと尋ねた。

そのほか、民族的マイノリティに関しても取り上げた。Stavrinaki 委員はアフリカ系の子どもたちに対するストリップ・サーチ(衣服を脱がせて調べる)が増えており、このグループに限って、他よりも6倍も高い確率で行われていることを指摘した。また、警察官が関与した死も近年増加しており、民族的マイノリティに対する制度的レイシズムが効果的に対処されていないことを指摘し、それらが原因で引き起こされるメンタルヘルスの問題にどのように取り組んでいるかなどについても質問した。

Kut 委員は、対話の間、すべての当事者が率直かつ協力的であったと感謝の意を述べた。最後に、代表団長は英国は公正な国づくりに引き続き注力し、人種的不平等に対処していくと決意を述べた。委員は、対話の間、すべての当事者が率直かつ協力的であったと感謝の意を述べた。

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