マイノリティであること、先住民族であること

阿部 千里(あべちさと)

札幌アイヌ協会会員

 

今回アイヌ女性として女性差別撤廃委員会に参加したのは、札幌アイヌ協会のメンバー3名。2003年の審査から参加している札幌アイヌ協会副会長の多原良子さんをリーダーとして、同会理事の光野智子さんと筆者は初めての参加であった。

筆者にとっては、2015年11月にマイノリティ女性の政府意見交換会に参加することも初めての経験で、「国の役人と面談する時間を調整できるなんてすごい…」と内心とても驚いた。私たちは、内閣官房アイヌ政策推進室からの担当者に「アイヌ政策は福祉対策ではなく、先住民族政策でなくてはならない」「アイヌ政策推進会議で議題になったことがないアイヌ女性に関する政策を議論すべきこと」はしっかりと伝えることができた。今年1月にも、私たちはアイヌ女性としてアイヌ政策推進室を訪問し、アイヌ女性のアンケート調査の結果からアイヌ女性が抱える複合差別の現状を訴え、説明した。多原さんの尽力により実現したこの面談の後には国会議員もまわり、勧告が出された後の国内での活用方法から、複合差別を解消するための施策の糸口等についても相談することができ、とても有意義なものになった。

そして翌月3人でジュネーブを訪れ、15日にはマイノリティ女性の方々と共に会場入りをした。初めて女性差別撤廃委員会に参加し、NGOブリーフィング等も含めて傍聴していると、多くの時間を割かれ議論がなされるのは「民法上の差別規定(再婚禁止期間、夫婦別姓等)」や「慰安婦問題」など、メディアでも大きく取り上げられる問題ばかり。なかなかスポットの当たらないマイノリティの問題を議論してもらうには、ロビー活動が欠かせないのだと気付いた。

私たちに課題は大きく2つあった。マイノリティ女性として抱える「複合差別の実態把握・解消」と先住民族女性として「先住権の議論を主張」することである。アイヌ女性にはもちろん、教育や雇用、収入における格差やDV被害者への支援等、部落女性や在日コリアン女性などのマイノリティ女性と共通して抱える問題はある。それに加えアイヌ女性には、先住民族女性として当然に保障されるべき権利がある。IMADRの方々に支えられながら、札幌アイヌ協会の3人で精一杯委員への働きかけを行なった。

審査では、教育向上や雇用、女性に対する暴力の問題においてアイヌ女性も、マイノリティ女性と共に言及がなされた。また差別禁止法の制定やマイノリティの声をきちんと反映できるような選挙改革について発言もあった。男女共同参画基本計画において、マイノリティ女性への具体的な措置があるのかについて質問がなされたことは意義深く、現在の第4次計画でも活用したいと感じた。アイヌ女性としては、アイヌ政策を議論する「アイヌ政策推進会議」について、委員により2度も言及された。その推進会議で議論される現行のアイヌ政策は「民族共生の象徴となる空間」という文化施設建設が中心の文化政策であり、先住民族政策とはなっていない。今の段階ではどのような勧告が出されるか分からないが、先住民族固有の権利と女性としての権利が尊重される勧告がでることを願っている。

これまで同様にマイノリティ女性と共闘しながらも、先住民族女性として発信し、交渉し、理想を現実にできるような実行力を身につけることの大切さを実感した。アイヌ女性の先住権を守ることが、私たちが抱える複合差別解消への近道である。先住民族として主流社会と異なる人間集団であるアイヌ民族が、日本政府と対等なパートナーシップ(関係性)を構築することができれば、この国はもっと多様性のある国になる。差別の無い社会は誰もが生きやすい社会だと信じている。

IMADR
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