2013.07.22

シンポジウム報告:「使い捨てにされる人々~人身売買大国ニッポンの現実」

日本は人身売買の受け入れ大国でありながらも、問題が見えにくくなっていることから、ほとんどの人がその現実を知らず、社会的な問題としても認識されずに、政府の取り組みも進んでいません。現実には、人身売買は私たちの日常生活に深くつながっている課題ですが、そのつながりが見えていないことも課題です。そこで、それらの課題を見える形にしようと、人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)等と共催で、6月29日に明治大学でシンポジウムを開催しました。なお、このシンポジウムは、米国務省が人身売買報告書を公表するタイミングで開催しました。同報告書では今年も、日本は「政府は努力をしているものの、人身売買撤廃のための最低基準を満たしていない」国として評価されました。

シンポジウムは、①外国人技能実習制度にみられる労働分野における人身売買の実態報告、②女性に対する性的搾取の人身売買の実態報告、③問題解決に向けた提言、の三部構成で行いました。学生をはじめ関心ある市民やメディア関係者など、約200人が参加しました。シンポジウムの報告は、後日、IMADR-JC通信に掲載しますが、ここでは、その概要を報告します。

実習制度を廃止し移動の自由のある労働者としての受け入れを

外国人技能実習制度に関しては、遠方からかけつけた中国出身の3人の女性技能実習生により、日本の雇用主による契約違反、法定最低賃金をはるかに下回る賃金や残業代の不払いなど不明朗な賃金計算、契約期間内での帰国の強要といった現在直面する数々の労働基準の違反や人権侵害の実態が報告されました。

また、技能実習生の人権擁護に取り組む鳥井一平さん(全統一労働組合・移住連)が、多くの技能実習生が行動の自由などが制約されたなかで長時間の強制労働に就かされていること、女性実習生の場合は雇用主からのセクハラ被害にあっていることなどについて、写真をまじえながら報告しました。鳥井さんは、この問題に長年取り組んできたことにより、米国務省から6月中旬に「人身売買と闘うヒーロー」として表彰されたばかりです。

さらに、2008年6月に設立された外国人研修生問題弁護士連絡会の共同代表の大坂恭子さん(弁護士)が、相談を受けたり数多くの裁判で明らかになった実態をふまえて、「技能実習制度を維持していることじたいおかしい」と語りました。また、日弁連でも09年に人権擁護委員会内に技能実習生問題PTを設置し、11年4月に日弁連として「外国人技能実習制度の廃止に向けての提言」を、13年6月に「早急な廃止を求める意見書」を発表して厚生労働大臣と法務大臣に提出していることが報告されました。

男女の親密な関係を悪用した性的搾取

女性の性的搾取に関しては、武藤かおりさん(NPO法人女性の家サーラー)と藤原志帆子さん(NPO法人ポラリスプロジェクトジャパン)が報告しました。被害者の多くが公的な保護・支援につながっていない実態について、また、夫婦や恋人など親密な関係を利用した人身売買が起きていることについて、シェルターおよびホットラインを民間ベースで運営する二人の共通した経験として語りました。近年、そのような背景のもと、日本人女性が人身売買の被害者になる例も明らかになっていることが報告されました。

人身売買対策に関する提言

国連から求められていることとして、原由利子(反差別国際運動)が、09年に公式に日本を訪問調査し、10年6月、国連人権理事会に日本に対する勧告を含む報告書を提出したジョイ・エゼイロさん(人身売買に関する国連特別報告者)が提示した21項目の勧告をあらためて紹介し、実施の重要性を訴えました。

さらに、山岡万里子さん(ノット・フォー・セール・ジャパン)が、13年4月にバングラデシュで1,100人を超える労働者が命を落とす大惨事となった、複数の工場が入居するビル倒壊事故を例に、安価で手に入る製品の背後にある労働搾取の実態と、現実を知らない消費者に関して報告しました。

最後に、吉田容子さん(弁護士、人身売買禁止ネットワーク共同代表)が、政府の人身取引対策の体制の確立、技能実習制度の廃止と外国人を労働者として受け入れる制度設計、的確な被害者認定、被害者支援の充実、防止施策のための現行法の見直しや教育・啓発の拡充などを政府に求める要請書案の内容を説明しました。

要請書はシンポジウムの参加者の拍手で採択され、7月1日に政府に送付されました。なお、同要請書をもとに、人身売買禁止ネットワークの代表が人身取引対策省庁連絡会議に対して7月25日に申入れを行ないます。

要請書の全文は、以下の通りです。

要請書をクリックすると全文がごらんいただけます。

 

 

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