9月9日(月)、第33回ヒューマンライツセミナー「映画『さとにきたらええやん』を観て、子どもの居場所を考える」を、大阪市中央区のエル・おおさかにて開催した(主催:第33回ヒューマンライツセミナー実行委員会)。
第一部は、西成区釜かまがさきヶ崎にある「こどもの里」を舞台にしたドキュメンタリー映画『さとにきたらええやん』(監督:重江良樹、2015年)を上映し、第二部は映画に続くトークとして、こどもの里とも関係がある、カトリック大阪高松大司教区シナピスの松浦ビスカルド篤子さんをお迎えした。
映画上映というこれまでにない試みを行ったヒューマンライツセミナー。参加者は340人であった。当日の概要、寄せられた感想などを報告する。
セミナーの内容
第一部:映画の中心となる「こどもの里」は、背景に関係なく、来たい子どもたちが誰でも来れる地域の児童館である。学校帰りに遊びに来る子、夜遅くまで親が働いている子ども、事情があって一時的に宿泊したり、親元から離れている子ども、いろんな子どもがやってくる。子どもだけではない、親たちも一息つける場だ。時に悩み、立ち止まりながらも成長していく子どもたちに、館長の荘保さん、いろんなスキルをもつ若いスタッフが寄り添う。「こどもの里」にくる子どもや親が抱える「しんどさ」に、そこにいる人たちが一緒になって向きあう。そんな居場所が描かれていた。
第二部:松浦さんに「こどもの里」と活動するシナピスについて、映画を振り返りながらIMADRの豊田が話をきいた。
●こどもの里とシナピスの関係について。シナピスは、難民や移住者の在留資格の問題や生活面でのサポートを行っている。「こどもの里」が外国籍の子どもやその親たちと関わる中で、入管や行政の手続きで壁にぶつかった時に、相談したり、サポートを行っている。ドキュメンタリーに出ていた少年は、親の事情で出生届けが行われず、無国籍であった。シナピスは、少年の在留資格取得を助けた。
●シナピスでの居場所づくりについて。庇護を求めてやってきた難民の人たちが、どうにか雨露をしのげるような場所を提供しなくてはというのが始まりで、現在はさまざまな国から来た難民、DV被害の移民女性、人身売買の被害にあった女性などが一時的に生活できるシェルターを2カ所運営している。
● こどもの里の館長・荘保さんが考える居場所とは「自分を肯定してくれる、自分が自分で生きられる、自分を受け入れてくれる、自分を認めてくれる場所」。これはシナピスにも共通する。誰もが尊重される、そういった場所があちこちにあれば生きやすい社会になると思う。
寄せられた感想(一部を紹介)
●ドキュメント映画は、子どもたちのリアルな姿を映し出しており、様々な家族の背景がありながらも、里でいきいきとしている姿に感銘を受けました。またパネラーの方とのディスカッションについては、子どもは常に自分を肯定して欲しい、受け入れて欲しい、認めて欲しいと思う中で、その人の生命そのものが尊重されると分かれば生きやすいということ、あと子どもにとってはどんな親も親なのだという言葉が印象に残りました。
●知らなかったことが知れてよかった。日本に未だ国籍のない子がいることに驚いた。居場所がある、いていい場所があることがいかに大切か考えさせられた。子供たちの生きる力を感じた。
IMADR通信220号 2024年11月22日発行