ネパールは、気候変動の影響を最も被っている世界20カ国の一つとなっている。気候変動による洪水、土砂崩れ、干ばつ、さらに地震などによる災害に絶え間なく見舞われている。そのなかでも、災害の起こりやすい地域や川沿いなどの低地、不衛生なスラム地区に住んでいる周縁化されたコミュニティ(特にダリット)が最も影響を受けていることは、多くの研究により明らかである。ダリットは災害の余波の中で、救援へのアクセス、生活の再建、権利の保護において大きな困難に直面している。2023年11月のネパール・ジャージャルコート地震では、社会の周縁におかれているダリット女性たちが誰よりも困難な状況に見舞われた。この地震により、ダリット、特にダリット女性は甚大な被害を受け、救援物資の配給において差別を受けた。つまり、多くのダリット女性が必要な物資を得ることができず、取り残された。
土地所有権の欠如:ダリットの多くは土地を所有していないため、震災後の住宅再建を支援する政府支援プログラムを容易に利用できない。また、災害後に今住んでいる土地から追い出されるかもしれない。
ジェンダーに基づく暴力: ダリット女性は、災害後の混乱した状況の中で、性的・身体的攻撃やDVなど、ジェンダーに基づく暴力を受けやすい。こうした状況は、彼女たちの周縁化された立場や支援サービスへの限られたアクセスによってより悪化する。
人身取引と搾取:災害により、ダリット女性は、売春、強制労働、人身取引などの搾取に対してさらに脆弱な状態におかれる。
復興への道:近年は進展があったものの、まだ多くの課題が残されている。ダリットとダリット女性が生活を再建し、国の復興に全面的に参加できるようにするためには、以下のことが必要である。
1)平等と包摂を促進する政策やプログラムを実施し、ダリットの教育、保健・医療、経済への平等なアクセスを確保すること
2)差別やカーストに基づく暴力に対抗する法律など、ダリットに対する法的保護を強化すること
3)ダリットのエンパワメントや権利擁護の活動をしているダリットの団体をサポートすること
4)ダリットを含む周縁化されたコミュニティのニーズを最優先する災害対策および計画に投資すること
これらの課題に取り組むことで、ネパールは、ダリットやダリット女性を含むすべての市民にとって、より公正で公平な将来を実現することができる。
IMADR通信220号 2024年11月22日発行