インドにおける性暴力の高まりは憂慮すべき事態にある。2024年8月9日には、インド西ベンガル州コルカタにあるR.G.カー医科大学病院で、31歳の女性研修医がレイプされ殺された。事件は、女性と医師の安全性に関する問題に拡大し、徹底的な調査を求める広範な抗議活動へと発展した。この事件だけではない。数日後、ウッタル・プラデーシュ州ムラーダーバードにある市立病院内で、ダリットの看護師が医師にレイプされる事件が起きた。ダリットの女性と女児は、カースト、家父長制、階級という三重の抑圧に直面し、特に性暴力を受けやすい。
法律と現実
憲法上の保護や個別の法律があるにもかかわらず、インドでは残虐行為が止まらない。統計によれば、毎日、11人のダリット女性と女児がレイプされており、この10年間で約2倍に増えた(2012 ~ 2022年、インド内務省国家犯罪統計局)。ダリット女性への性暴力は、支配を誇示し、カーストに基づく権力構造を維持するメカニズムを表している。
インドの警察や司法制度は、しばしばカーストやジェンダーに基づく偏見を誇示し、マイノリティ女性の正義の追求を困難にしている。2017年、17歳のダリット女性が集団レイプされたウンナオ事件は、行政や司法の怠慢によって何人もの女性の命が奪われていることを端的に表した。同様に、2020年のハトラス事件では、19歳のダリット女性が集団レイプされた後に死亡し、遺体は家族の承諾を得ないまま州警察により火葬された。しかし、これらの行為に責任をもつ警察官は、指定カースト/指定部族(残虐行為防止)法第4条に基づき責任を問われることはなかった。このように、偏見が、低い有罪率の一因となっている。国家犯罪統計局の2022年の統計では、有罪率は約30%である。
私たちは、被害者と家族への正義、徹底的で公正な調査、残虐行為防止のための効果的な措置を要求する。また、女性の権利保護と性暴力を存続させているカースト制度の廃止も要求する。
性暴力はジェンダーだけの問題ではなく、カーストや階級の問題でもある。私たちは、こうした抑圧の交差性を認識し、より包摂的で公正な社会を目指さなければならない。権利を取り戻し、女性と女児が尊厳と尊敬のなか生きていけようにしよう。沈黙を破り、凶悪犯罪に対して声をあげよう。すべての人にとってより安全で公正な社会を実現しよう。そのために、国内・国際機関と協力する。
IMADR通信220号 2024年11月22日発行