2019.10.25

人種差別撤廃のグローバルコールにIMADR意見提出

人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容の完全撤廃と、ダーバン宣言及び行動計画の包括的実施とフォローアップのための具体的行動のグローバルコール

IMADRは国連人権理事会諮問委員会が作成した標記のグローバルコール(世界的呼びかけ)の文案に対する意見を、10月22日同諮問委員会に提出しました。グローバルコールは2001年の反人種主義・差別撤廃世界会議/ダーバン会議で採択された行動計画の包括的実施を促進する国連による継続的な取り組みの一環で行われるものです。

IMADRの意見は次の2点に関するものです:人種差別撤廃条約の国連全加盟国による批准と完全実施;そして国連人権理事会が任命する人種差別に関する特別報告者の責務遂行への各加盟国による協力。IMADR提出文はこちら(PDF)を、日本語の要旨は以下をご覧ください。

諮問委員会のグローバルコールの文案は次のURLからご覧いただけます。https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/AdvisoryCommittee/Pages/GlobalcallTotalEliminationRacism.aspx

IMADRが提出した意見の要旨(一部除く)

1)国連全加盟国による人種差別撤廃条約の批准                現在、181ヵ国が批准しており、16ヵ国は条約に署名しただけに留まっているか署名をしていません。        

2)全締約国による個人通報制度の受け入れ(14条の受諾宣言)         締約国のうち個人通報制度を受け入れているのは58ヵ国だけであり、残る123ヵ国は受け入れていません。人種差別の被害者にとってこの制度は非常に重要であり、締約国によるこの制度の受け入れが急がれます。

地域別にみた個人通報制度受入れ国の数 58 (アフリカ 5、アジア太平洋3、東ヨーロッパ  17、ラテンアメリカとカリブ海諸国 12、西ヨーロッパとその他 21)

3)4条の留保撤回                             条約4条は、締約国に、人種主義的なヘイトスピーチに示されるように、肌の色や民族性などを理由に特定の集団だけが優れているという意見や理論に基づくプロパガンダや組織を禁止するよう定めています。しかし4条(全部あるいは一部)を留保したまま批准を行い、そのままになっている締約国が多数あります。ヘイトスピーチの世界的な広がりを考えれば、4条留保の撤回は急がれる課題です。

地域別にみた4条留保の国の数 19 (アフリカ 0、アジア太平洋 4、東ヨーロッパ 0、ラテンアメリカとカリブ海諸国 4、 西ヨーロッパとその他 9)

4) 勧告のフォローアップ                          締約国の報告書にもとづいて実施される審査によって出される総括所見と勧告は、当該国における人種差別との闘いにとって重要なツールとなります。しかし、例えば2007年から2017年の期間をみれば、67の締約国がフォローアップ勧告の1年以内の実施状況の報告を怠っています。これを果たすことは、締約国の人種差別撤廃の決意と政治的意思を示すことになります。

地域別にみたフォローアップ勧告に従わなかった国の数 51(アフリカ 15、アジア太平洋 17、東ヨーロッパ 4、ラテンアメリカとカリブ海諸国 10、 西ヨーロッパとその他 5)

5) 人種差別に関する特別報告者との協力                     人種差別に関する特別報告者による国別訪問は、人種差別撤廃をめざすその国の政府および市民社会組織にとって有用な機会となります。訪問を通して特別報告者は現状を具体的で詳細に把握し、より適切なアドバイスを提供できます。しかし、2019年9月現在、人種差別に関する特別報告者による24カ国への国別公式訪問のリクエストが保留されたままになっています。

地域別にみた人種差別特別報告者の訪問リクエストを保留している国の数 24 (アフリカ 8、アジア太平洋 8、東ヨーロッパ 1、ラテンアメリカとカリブ海諸国 5、 西ヨーロッパとその他 2)

世界から人種差別をなくすために、国連および人種差別撤廃条約締約国は、国連が築いてきた人権システムのもとでのさまざまなメカニズムを、誠実にそして包括的に実施するべきであるとIMADRは考えています。

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