2022.03.22

院内集会「レイシズムを、ゼロに。」報告

人種差別撤廃NGOネットワーク (ERDネット) は2022年3月17日、衆議院第二議員会館にて、国際人種差別撤廃デーを記念した院内集会『レイシズムを、ゼロに。』を開催いたしました。

新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑み、オフラインとオンラインのハイブリッド開催となりました。
ご参加いただいた方は現地で約50名、オンラインでは約80名で、全体では約130名でした。
また、12名の国会議員にもご参加いただきました。

基調講演

基調講演は「私たち市民社会が目指す『人種差別撤廃法』」というタイトルで、弁護士の師岡康子さん(外国人人権法連絡会事務局長)が行いました。
日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入しているものの、日本政府はその条約上の義務を怠っていることを指摘。
また、2016年のヘイトスピーチ解消法制定について、「差別撤廃政策の出発点となりうるものでした」とその意義を評価しましたが、制定後もネット上のヘイトスピーチは止まず、ヘイトクライムの被害も相次いでいることから、より一層の対策が必要であると語りました。
加えて、その対策の提案の一つとして、外国人人権法連絡会が策定している人種差別撤廃法のモデル案について紹介がありました。

師岡康子弁護士による基調講演

リレートーク

リレートークでは、移民・難民、在日コリアン、被差別部落、アイヌ民族、琉球それぞれに関する発言がありました。

移民・難民への差別に関しては、髙谷幸さん(移住者と連帯する全国ネットワーク理事)から「移民・難民 市民ではない者への人種差別」と題した報告がありました。国連人種差別撤廃委員会の一般的勧告30(2004)に注目し、現在の日本における移民・難民への差別を禁止する法律や取り組みが必要であると語りました。

在日コリアンへの差別に関しては、郭辰雄さん(コリアNGOセンター代表理事)から発言がありました。郭さんは冒頭、今年がサンフランシスコ講和条約の発効から70年であるということに触れ、これは、在日コリアンが一方的に国籍を剥奪された日から70年が経過したということでもあると語り、その間、差別が徐々に改善されてきた点もあるとしながら、いまだに課題が多いことを強調しました。
ヘイトスピーチ・ヘイトクライムの根絶、子どもたちの学ぶ権利の保障、社会参画の権利の保障といった課題の解決の前提には、差別を禁止・撤廃する法制度が必要であると訴えました。

被差別部落への差別に関しては、近藤登志一さん(部落解放同盟東京都連合会書記長)が登壇。
現在、東京高裁に控訴している「全国部落調査」復刻版差し止め事件裁判について報告がありました。特に、地裁判決で「差別されない権利」について「権利のないじつは不明確」として退けられたことを強調し、国際人権基準に合致した差別禁止法と国内人権機関の必要性を訴えました。

リレートークで発言する近藤登志一さん

アイヌ民族への差別に関しては、多原良子さん(メノコモシモシ代表)から発言がありました。
2019年に制定されたアイヌ新法について、アイヌを先住民族と認めた上で、参議院の付帯決議では差別を根絶するための措置が必要だと言及されており、期待を抱いていたものの、現在も数多くのヘイトスピーチなどの被害が相次いでいることから、辛い思いを抱えていると語りました。
また、先住民族の存在自体を否定する言説もあると語り、政府に対して法律に基づいた実効性のある措置を講ずることを求めました。

琉球への差別に関しては、親川裕子さん(沖縄人権法研究会)から報告がありました。
国連人権委員会からの度重なる勧告にも関わらず、人種差別撤廃法が一向に制定されないまま、被害者の救済がなされない現状に懸念を示しました。
また、近年はネット上におけるヘイトスピーチが顕著であること、新基地建設に抗議する人びとに対しての侮蔑的な発言も相次いでいると語りました。
加えて、立法事実もない中で成立にいたった土地規制法を引き合いに出し、人種差別撤廃法の立法事実がより多いことは明らかだと指摘。制定を急ぐべきであると訴えました。

報告:韓国の差別禁止法制定運動の経過

イ・ジンへ弁護士(移民センター”チング”事務局長)からは、韓国における差別禁止法制定の動きについて報告がありました。
差別禁止法の目的について「政治的・経済的・社会的・文化的、あらゆる領域での差別を禁止し、被害者を救済することで憲法上の平等権を保護し、人間としての尊厳と価値を実現する」ものであり、具体的な内容としては「国及び地方自治体等の差別是正義務」「差別禁止及び予防措置」「差別による被害の救済措置」「罰則」などがあると紹介がありました。
また、この差別禁止法の制定に向けて韓国国内ではどのような社会運動や連帯が見られているかということについても報告があり、24時間シットインや毎週木曜日にデモが開催されていること、制定を求める行進など、様ざまな取り組みが行われていると語りました。

イ・ジンへ弁護士からの報告

海外からの連帯メッセージ

連帯メッセージはぞれぞれ、ドゥドゥ・ディエンさん(元人種差別に関する国連特別報告者)、アナスタシア・クリックリーさん(元国連人種差別撤廃委員会議長)、人種差別撤廃条約国内実施モニタリングのための韓国NGO連合よりいただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。
連帯メッセージはこちらの投稿よりご覧いただけます。

連帯メッセージの紹介の後、閉会の挨拶を経て集会は無事終了しました。
多くの皆様にご参加いただき、またご関心を持っていただいたこと、ありがとうございました。

私たちはこれからも「レイシズムを、ゼロに。」するために活動を続けていきます。

Archive