2022.09.14

経産省ビジネスと人権に関するパブコメに意見を提出しました

経済産業省が「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」策定のためにパブリックコメントを募集しました(8月29日締め切り)。それに対してIMADRは次の内容の意見を提出しました。こちらのPDFでもご覧いただけます。

責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン(案)への意見  

意見 1
1.3 本ガイドラインの対象企業及び人権尊重の取組の対象範囲と範囲
国外、特に周辺地域のサプライチェーンにおいて起こりうる人権への負の影響や人権侵害について、具体的にどのような問題があり、いかに特定できるかの説明が足りないと考える。国内で起きる人権侵害とは異なり、国外の場合、特定は容易ではない。冒頭に、「日本はアジア諸国とともにサプライチェーンを整備してきた」とある。その途上で起きた人権侵害への対処や教訓も豊富にあると考えるので、それらに基づき、類型や特定方法など、具体的な説明ができるのではないか。アジア・太平洋地域には多数の異なる先住民族が住んでいて、その多くが企業活動による負の影響を受けてきた。さらに、アジアの多くの国は多民族国家であり、宗教や文化も一様ではなく、社会・経済的にも格差が存在する。日本国内の人権問題の尺度だけでは測ることができないダイナミズムがあるため、人権への負の影響の特定は容易ではない。この説明は3.1 で後述されている「影響を与えうる人権の把握」にも役立つ。

意見 2
2.1 取組の概要
コミットメント(約束)は(言質)あるいは(誓約)がより適切と考える。

意見 3
2.1.2.1 「人権」の範囲
「特に、ある国の法令やその執行によって国際的に認められた人権が適切に保護されていない場合においては、可能な限り、国際的に認められた人権を最大限尊重する方法を追求する必要がある。」
①世界にはLGBTQを認めていない国が少なからずある。その前の段落にある「ジェンダーによる差別を受けない自由」には性的指向や性自認による差別も含まれるので、それについても明示的に言及すべきである。
②「国際的に認められている人権が保護されていない場合、可能な限り最大限尊重する方 法を追求する必要がある」とあるが、企業にとっては大きな挑戦に思える。ここの説明はより実践的に示すよう提案する。

意見 4
2.1.2.3 「ステークホルダー」
先住民族、少数民族あるいは社会的マイノリティの多くは企業活動による人権の負の影響をうけている。これら当事者の多くは権利保持者として問題に立ち向かっている。そのため、ステークホルダーに、被害当事者(あるいは他の名称で)として挙げるべきと考える。同じステークホルダーに含まれている人権擁護者は、往々にしてこれら当事者のなかから出ている。また、2.2.3 のステークホルダーとの対話には、当事者である彼・彼女たちが必ず含まれるべきである。

意見 5
4.1.2.2 脆弱な立場にあるステークホルダー
「脆弱な立場に置かれ得る個人、すなわち、社会的に弱い立場に置かれ又は排除されるリスクが高くなり得る集団や民族に属する個人への潜在的な負の影響」とされているが、その集団に属しているために特定の個人が影響をうけるケースだけではなく、それら集団やコミュニティ全体が負の影響を受ける場合があることを明記すべきである。例えば、開発目的のために土地や資源を奪われる先住民コミュニティ、社会的に排除されてきた集団ゆえに児童労働、強制労働、債務奴隷の被害が出やすいダリットなど、サプライチェーンの上流には多数のリスクがある。
脆弱な立場にある属性の重複に関して述べられている。ビジネスと人権の議論においても、ジェンダーの主流化が求められ、差別の交差性や複合差別による人権侵害はサプライチェーンにおいてもさまざまな形で起きうる。この問題についてより明確な説明が必要と考える。

意見 6
4.2.3  構造的問題への対処
「構造的問題とは、企業による制御可能な範囲を超える社会問題等により広範に見られる問題」とあるが、少なくとも事業展開する国や地方に存在する構造的問題についての事前の調査と把握は必要である。また、それによりサプライチェーンで起こりうる人権問題の把握も必要である。「問題の解決に責任を負うわけではない」のは確かだが、ここで言明する必要はあるだろうか?アジアの多くの国には国内人権機関がある(日本にはない)。これら人権機関はビジネスと人権の指導原則の国内行動計画の策定に関与したり、国内の構造的な問題と人権への影響について十分な知識と経験を有し、企業活動による人権の負の影響についても対応をしている。これら国内人権機関は海外の企業がこの問題に対処するときの重要な知識や情報源になる。このことに言及すべきである。

意見 7
5.1 苦情処理メカニズム
自社あるいは他の企業や組織との協力による苦情処理メカニズムにおいて、属性を理由に人権への負の影響を受けた人の苦情には、同じ属性に属する関係者あるいはその問題を理解している現地の関係者で、必要な知識を有する人が当たることで、より有効な対処ができると考える。
5.2 国家による救済
国家による救済手段を提供する機関の一つとして、出先国にある国家人権機関を追加すべきではないか。上述のように国家人権機関は政府から独立した機関であり、人権侵害の苦情の受付と調査および救済手段の提示を行っている。さらには人権教育や人権啓発も行っている。救済について適切なアドバイスが期待できるのではないか。

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