第5回世界ダリット会議に参加して

IMADR通信219号 2024/8/8発行

ジェレノー 治美
IMADR会員

 

2024年4月13日~15日、マレーシアのセランゴール州で第5回世界ダリット会議が開催され、B.R.アンベドカル博士の生誕133周年が祝われた。

1日目は歓迎の夕食会が開かれ、140ヶ国の参加者の前でダリットの若者たちによる力強く素晴らしい踊りが披露された。
次にスティーブン・シム マレーシア人的資源大臣は「世界ダリット会議がマレーシアで開催されることを知り、強く参加を希望した。アンベドカル博士は厳しい差別をうけながらも教育を受けることを決して諦めず、たくさんの人々のためになる仕事をし、様々な分野の人達から尊敬された。彼の認知度がマレーシアで高くないという事実はこの国の大きな課題であるが、私たちが彼の人生から学べることはたくさんあるため、教育のなかに導入するべきだ」と熱弁をふるった。

2日目はアンベドカル博士の生誕133周年記念に、マレーシアの首相アンワル・イブラヒムが参加した。
イブラヒム首相は、「私たちは今一度、マイノリティーや基本的人権について考え、正しい道へ向かわなければいけない。そうしないと私たちは偏見と差別者の国を作ることになるだろう。アンベドカル博士の最も重要な教えは、教育の力だ。彼はアンタッチャブル(不可触民)と呼ばれたダリットに生まれ、学校の教室でも床に座らされ、喉が渇いても水を飲むことが許されず、床屋からも断られるような生活をした。逆境の中でも彼は諦めることなく2つの博士号を獲得するまで勉学に励んだ。そして何世紀にも及ぶ社会問題に変革を起こすために奮闘し、インド憲法を作った。マレーシア憲法を作る際、インド憲法をお手本にした事実をマレーシア国民は感謝し、覚えていなければいけない。そのためにも私は全力を尽くす」と力強い演説をした。

3日目は、故ラジュ・カンブル氏の功績を称え、マレーシアアンベドカル団体のカルバン代表が話した。
「20年以上前、マレーシアでのダリットコミュニティーは無名だったが、カンブル氏がマレーシア政府と繋げてくれたお陰で、第1回ダリット世界会議が開催され、ダリットコミュニティーの連帯が広がり深く感謝している」
次にAIM(アンベドカル・インターナショナル・ミッション)国際コーディネータのハーデヴ・サハイ氏がカンブル氏との思い出を語った。
「カンブル氏はアンベドカル博士の教えを忠実に守る最高の運動家だった。彼は高額所得者だったが、彼が亡くなった後銀行口座は空だった。彼は全財産をアンベドカル博士の団体に捧げたからだ。様々な場所に出向く時は必ず2、3個のスーツケースいっぱいのアンベドカル博士の本を配っていた」
その後、日本からIMADRの共同代表、部落解放同盟の組坂繁之のビデオメッセージに続き、福岡県筑後地区協議会の女性部長・田中かおるが筑後地区の部落の女性や子どもたちの実態について話した。
日本在住のダリット、スシャント・ゴデガテ氏は、「アンベドカル博士や先人たちがダリットの権利のために立ち上がってくれたお陰で、海外で学び働けるようになった。部落の人々と連帯し、次の世代にも繋げていかなければいけない」と話した。

3日間の短い期間だったが、先人たちのことを学び、自分自身が差別を撤廃していく当事者であると認識することが、真の連帯=エンパワメントになるのだと感じた。1953年、アンベドカル博士はインドで解放の父・松本治一郎と出会った。松本先生から受け継いだ世界の水平社を目指せとの信念と教訓を忘れてはならないと強く感じた。