2024年2月3日(土)、反差別国際運動は緊急企画「人権を実現できる日本に─マイノリティ女性の人権侵犯申立から考える」を、アジア・太平洋人権情報センターとの共催で開催した。
2016年2月、国連女性差別撤廃委員会による日本審査がジュネーブで開催された。この時、在日コリアン女性・アイヌ女性・部落女性・琉球/沖縄女性は現地で参加し、審査を通してマイノリティ女性が晒されている交差的/複合的な差別の解決の糸口をつかもうと声をあげていた。彼女たちのそうした姿を、杉田水脈氏は「…チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります…」などとSNS上で嘲笑し、差別煽動をおこなった。2022年末、マイノリティ女性フォーラムとして「『ヘイトスピーチ、許さない』杉田水脈議員に謝罪を求めます! 」というタイトルの署名活動をおこない、2023年2月に5万3千筆の署名を法務省に持参した。その後、在日コリアン女性・アイヌ女性がそれぞれ、大阪・札幌の法務局に人権侵犯被害を申し立て、2023年秋、その一部が「人権侵犯」であることが認められた。
今回のイベントでは申立手続きのプロセスやその結果の受けとめ、今後活用できる点と現行制度の限界について、多原良子((一社)メノコモシモシ代表、札幌法務局への申立人)ん、金英哲(弁護士、大阪法務局の申立立会人)さん、師岡康子(弁護士、外国人人権法連絡会)さんから、それぞれご報告いただいた。
司会進行を反差別国際運動の小森が務め、開会の挨拶をおこなった。マイノリティ女性らがこのように集会を開いて問題共有をおこなうことは初めてであることに触れ、重要な機会であることを強調した。
多原さんは、人権侵犯被害の申立について、当初は期待していなかったが、人権侵犯が認定されたことを伝えられた時には「まだこの国には少しは正義があったんだな」と感激したと振り返った。しかしながら、杉田水脈は依然としてアイヌ否定などの差別言動を続けており、差別やヘイトスピーチに対して実効性のある対応ができる国内人権機関の創設が必要だと訴えた。
金さんは、大阪弁護士会の取り組みであるヘイトスピーチ対策推進プロジェクトチームについて紹介し、ヘイトスピーチ・人種差別の被害を受けた人は相談料・着手金ともに無料で対応していることや、複数の弁護士が協力して、遠方であっても手続きをおこなっていると話した。また、本件の在日コリアン女性の大阪法務局への人権侵犯被害の申立につい
ても報告し、公的機関が議員に対して啓発をおこなったことは一定の影響があったと思う、とした。人権侵犯が認定されたことで被害者本人たちが救済されたと感じているのであれば、成功したと言えるのではないかとも語った。
師岡さんは、アイヌ女性・在日コリアン女性らの申立によって、公人による発言が公的に人権侵害と認められたことには意義があると語り、人権侵犯被害申告制度の概要や具体的な事例、民事裁判などとの比較を通して、その活用と限界について報告した。当面はこの制度を活用しつつ、その制度の改正を求めていくことも一つの方法だろうと語った。差別被害の救済について、本来であれば差別禁止法・国内人権機関・個人通報制度などの国際人権基準に適った法制度を整備すべきであるとし、今回の申立手続きからも、改めてその必要性が明らかになったと語った。
閉会の挨拶は、三輪敦子さん(アジア・太平洋人権情報センター)がおこない、国際人権基準を日本で実現するためには、「人権の3つのインフラ」である包括的差別禁止法・国内人権機関・個人通報制度が非常に重要であることを改めて理解したと述べ、これからも、ともに力を合わせていきたいと結んだ。