交差性とフェミニズム─ダリット活動家に聞く

先日、インドで利用者の多いオンラインデリバリーサービスがカーストや宗教に基づく分断悪化を指摘する記事に遭遇した。インドを含む南アジアには、ダリット(指定カースト SC)に対する差別が存在し、長い間社会生活のなかで分離されている。また、アングロ・インディアン・コミュニティは、インドの「マイノリティコミュニティ」とされ、長い植民地化の歴史を持つ英国の血統を父に持つ人びとを指す。インドにおけるダリットの人口は推計約1億6,600万人、アングロ・インディアン・コミュニティの人口は約12万5,000人である。
3月下旬、IMADRは、母親がアングロ・インディアン・コミュニティ出身で父親がダリット出身のジュディスにオンラインで話を伺った。

 

─どのように幼少期を過ごしましたか?
父がヒンドゥー教徒で母がキリスト教徒と文化的に多様であることは、私の名前にも表れています。私の名前はそれぞれの宗教的な名前が組み合わさってるため、毎回初めて会う人にどのコミュニティ出身なのか尋ねられ、自分のアイデンティティについてよく考えました。今ではいかに良い ‘人間’でいられるかに重きを置いています。

 

─差別について取り組むきっかけになったのは何ですか?
1つ目は、ジェンダー差別に遭遇したことです。両親は応援してくれましたが、祖母は「女の子は家事をするべき」と私の高等教育進学に反対しました。2つ目は、清掃カーストの存在に気づいたことです。ある日、家主の一人が‘Jamar(※1)’が来たといい、なぜ本当の名前で呼ばないのか疑問に
思いました。そこで初めてヴァルナ制について教わり、平等の概念に反するこれらの出来事を問題視するようになりました。

 

─教育機関において何か困難に直面したことはありますか?
大学に進学する際は女性のクオータ制を通して入りました。大学在学中、教授たちの対応が学生の出身コミュニティによって異なることに気づきました。また博士課程の間、 SCやST(指定部族)出身の生徒が「勉強するために来たのではない」「奨学金のために来たんだ」と言われているのをよく聞きました。さらに、会議や論文発表などの情報共有はとても限られていました。職業面では、母方のアイデンティティにとても助けられました。教授の仕事に応募し始めた時も、最初に肯定的な返事をくれたのは他でもないマイノリティの大学でした。

 

─インド社会内での変化はありますか?
より多くの人が自身のアイデンティティや権利を主張するようになったと思います。一方、他のコミュニティに対する反発も見受けられます。インド社会では近年、メディアで、カースト差別や過去の暴力に関する経験を差別されてきたコミュニティが主体となって発信しています(※2)。しかしカーストは残っており、(特に女性に対する)カーストに基づく暴力や差別は増加しています。ダリットコミュニティの中でも家父長制は根強く、ダリット市民社会組織でもリーダーシップは男性にあるなど、深刻な問題です。人権啓発の研修を受けても、情報の分配にジェンダー差が生じます。そのため女性に焦点を当て、リーダーシップを構築することが必要だと思います。

 

※1 Jamar は清掃カースト (a sweeper caste) 。
※2 本通信に掲載の映画紹介のページにてJudith おすすめのカーストに関する映画を紹介しています。