報告 「国連『包括的反差別法制定のための 実践ガイド』を日本で広めよう」

11月16日(木)、衆議院第一議員会館多目的ホールにて、院内集会「国連『包括的反差別法制定のための実践ガイド』を日本で広めよう」を開催した。

この院内集会には、「実践ガイド」の作成に携わり、前号の特集で取り上げたワークショップにオンラインで参加したOHCHR(国連人権高等弁務官事務所)人権オフィサーのクロード・カーンさんを日本に招き、報告をしていただいた。日本国内での人種差別や女性差別、人権擁護の活動に携わっている団体や個人などを中心に45人および国会議員9人の参加をえた。

 

開会の挨拶は、反差別国際運動(IMADR)理事で部落解放同盟書記長の赤井隆史がおこなった。

赤井理事は、同和対策事業が終了する前に、国に提出された人権擁護推進に関する答申を振り返り、その中では部落問題の解決を人権全般への取り組みに求めていくという趣旨の内容があったこと、また、人権に関する包括的な法律をつくるということが謳われていたことに触れた。2016年にはヘイトスピーチ解消法、障害者差別解消法、部落差別解消推進法が、2019年にはアイヌ新法が、そして2023年には極めて不十分ではあるもののLGBT理解増進法がそれぞれ制定されるなど、個別のマイノリティ課題に対する取り組みがあることは認めつつも、2012年以降、国会では包括的な人権の議論が行われていないとし、これを再び動かす必要があると強調した。

 

一方、地方自治体では、包括的な反差別法制の枠組みに近い条例の制定に向けた動きなどがあることにも触れ、そうした取り組みを通じて包括的反差別法の制定を目ざしていくことも重要であるとし、さまざまな試みをおこなっていくことが必要だと語った。 弁護士で、IMADR実践ガイド日本語版作成チーム代表の林陽子さんは、「実践ガイド」の内容について概要を述べた上で、この集会を経てガイドに盛り込まれていることを血肉とし包括的な反差別法制定への工程表をつくる一歩としたいと、より具体的な実践につなげる意欲を示した。

その後、集会のメイン・スピーカーであるクロード・カーンさんが「実践ガイド」の作成の経緯やその内容についてより詳細に報告した。そして、英国の人権NGO・ERT(Equal Rights Trust)のジム・フィッツジェラルドさんから届いたビデオメッセージを上映した。長年、平等の課題に取り組んでいるERTは、OHCHRと協力して、この実践ガイドを作成した。

集会の後にはクロード・カーンさんとの意見交換会を実施。NGO、研究者、大学生などを中心に多くの参加をえて有意義な議論が交わされた。これまで差別の問題に関わることが少なかったという参加者も、「実践ガイド」の公表を受け、関心を刺激されて参加したと語り、包括的反差別法の制定をめざす運動の新たな拡がりを感じさせた。

(IMADR事務局)