ジュネーブ便り〜国連人権理事会 理事国選挙〜

白根大輔

国際人権シニアアドバイザー

国連人権理事会
国連人権理事会(Human Rights Council、通称HRC)はその名の通り、人権問題を扱う主要な国連機関の一つで、47の理事国で構成される政府間機関だ。地域ごとの公平な代表のため、この47の理事国はさらに、国連によって定められた以下の地域グループごとに定数が割り振られている。

•アフリカ(エジプトを含むアフリカ大陸の国54カ国)― 13
•アジア・太平洋(中東、中央アジア諸国も含む55カ国)― 13
•東欧(コーカサス諸国、ロシアを含む23カ国)― 6
•中・南米(33カ国)― 8
•西欧その他(北欧諸国、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、アメリカ、ギリシャ、トルコを含む29カ国)― 7

このように定められた理事国は国連総会で、毎年その3分の1ずつが193の国連加盟国による無記名投票で選ばれる。理事国の任期は3年、連続して任期を務められるのは1度までとされており、2期連続して理事国を務めた国は、自動的にその直後の任期で再選の資格がなくなる。

2023年理事国選挙
現在、人権理事会理事国となっている国のうち、以下の15カ国の任期が2023年12月31日をもって終了となる(下線の国は理事国を2期連続して務めており、次の任期では再選の資格がない)。

•アフリカ ―  コートジボワール、ガボン、マラウィ、セネガル
•アジア・太平洋 ―  中国、ネパールパキスタン、ウズベキスタン
•東欧 ― チェコ、ウクライナ
•中・南米 ― ボリビア、キューバ、メキシコ
•西欧その他 ― フランス、イギリス

国連総会は2023年10月、次の任期で理事国を務める15カ国を決める選挙を行った。以下は各地域の立候補国とそれぞれの得票数の一覧で、当選した国は太字にしてある。アフリカ、アジア・太平洋、西欧その他地域に関しては、立候補国が空席数と同数という形になり、実質上、形式的な選挙となった。

• アフリカ ― コートジボワール(181票、再選)、ブルンディ(168票)、マラウィ(182票、再選)、ガーナ(179票)
•アジア・太平洋 ― クウェート(183票)、中国(154票、再選)、インドネシア(186票)、日本(175票)
•東欧 ― アルバニア(123票)、ブルガリア(160票)、ロシア(83票)
•中・南米 ― ブラジル(144票)、ペルー(108票)、ドミニカ共和国(137票)、キューバ(146票、再選)
•西欧その他 ― オランダ(169票)、フランス(153票)

当選した15カ国は2024年1月1日から2026年12月31日まで理事国としての任期を務めることとなる。

ロシアの立候補と落選
ロシアは2021年から理事国となっていたが、ウクライナ侵攻を受け、2022年4月、国連総会は賛成93、反対24、棄権58という投票結果でロシアの人権理事会での理事国資格停止を決定した。その1ヶ月後に行われた補欠選挙ではチェコが2023年12月31日までの任期を務める理事国として選ばれていた。それから1年後、ロシアは改めて人権理事会の理事国に立候補したが、得票のためにかなり押しの強いキャンペーンを展開していたという報道からも、単なるポーズではなく、本気で当選を狙っていたとみられている。
人権理事会はあくまで政府間機関であり、必然的にその議論や決定は政治的で、問題によっては効果的な行動が取れないこと、人権侵害を問われる国が理事国となっていることなどの問題も当初から指摘されてきた。仮に今回ロシアが当選するようなことになっていたら、人権理事会という機関はさらに弱体化しただろう。結果は上記の通り、全立候補国中、かなり差のついた最小得票であり、明らかな落選となったが、83票を獲得したという事実は、現在の国際政治、国連システムの中にある分裂、危機要素を如実に示してもいる。

●しらね だいすけ