ジュネーブ便り〜国内人権機関の早期創設が求められる日本

白根 大輔

国際人権シニアアドバイザー

 

日本の第4回UPR
2023年1月31日、スイス、ジュネーブの国連本部で日本の第4回普遍的定期審査(Universal Periodic Review、通称UPR)が行われた。2006年、国連人権時理事会の設立とともに設置されたこの制度では、4年半を1サイクルとし、国連加盟国193カ国の全ての人権状況がその他の国連加盟国により審査される。2022年11月に行われたUPR作業部会第41会期から第4サイクルに入り、日本の第4回審査は作業部会第42会期で行われ、100を超える国連加盟国から日本に対して人権の効果的な保護、促進のための勧告が出された。

 

繰り返される勧告
日本のUPR審査は2008年、2012年、2017年に行われているが、毎回の勧告で指摘されている課題の一つに国内人権機関の設置がある。第1回UPRでは5カ国から、第2回では13カ国、第3回では31カ国から、そして今回は29カ国から国内人権機関の設置を呼びかける勧告が出された。UPRでは審査された国が出された勧告のうち、何を受け入れ、何を拒否するかを選ぶことができる。日本は第3回UPRまで基本的に国内人権機関設置についての勧告をほぼ全て受け入れており、これまでの傾向からしても、今回出された勧告を受け入れるだろう(2023年6月19日から開催される国連人権理事会第53会期までにその返答が出される)。またUPRとは別に行われる国連人権条約機関による日本の審査でも毎回のように国内人権機関の設置に関する勧告が出されており、条約機関からの勧告は全て条約加盟国として履行する義務がある。

 

世界各国の前進、日本の遅れ
国内人権機関の設置は、各国が国内で効果的に国際人権基準を履行するために必要とされる最も基本かつ根本的なステップだ。1991年にはパリで国内人権機関に関する初の国際会議が開催され、効果的な国内人権機関の権限、機能、条件等を定めたパリ原則が作成された。1993年にはこのパリ原則が国連総会でも採択され、以来、全国連加盟国に対してこの原則に沿った国内人権機関の設置が呼びかけられている。同時に各国での効果的な国内人権機関設置のために国際的な調整委員会も設置され、現在は国連人権高等弁務官事務所が事務局となって、世界各国の国内人権機関が加盟する世界国内人権機関連合(Global Alliance of National Human Rights Institutions、通称GANHRI)が組織されている。GANHRIには、加盟する全ての国内人権機関のパリ原則との適合性を認定する認証委員会も設置されている。
現在GANRHIによりパリ原則に完全に適合すると「A認定」された国内人権機関は89ヵ国に、部分的に適合すると「B認定」された機関は31ヵ国に設置されており、国連加盟国の3分の2近くの国が、既に国内人権機関を有している。中央アジアを含めアジア・太平洋地域でA認定となる国内人権機関がある国は合計16ヵ国(オーストラリア、インド、インドネシア、イラク、ヨルダン、マレーシア、モンゴル、ネパール、ニュージーランド、フィリピン、カタール、韓国、サモア、パレスチナ、タイ、東チモール)、B認定機関がある国は合計11ヵ国(バーレーン、バングラデシュ、フィジー、モルジブ、ミャンマー、オマーン、スリランカ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)ある。その他の地域でA認定機関がある国は、アフリカ地域に28ヵ国、北・中・南米地域に14ヵ国、ヨーロッパには31ヵ国ある。
今年は、パリ原則の国連総会採択から30年、日本が最初にUPR審査を受けてから15年。多くの国が具体的に行動し、各機関からの勧告も続く中、日本には未だ国内人権機関も差別を禁止する法律もない。

 

●しらね だいすけ