IMADRは、昨年の国会において杉田水脈前政務官の過去のヘイトスピーチ、差別煽動が改めて追及されたことを受け、マイノリティ女性フォーラム、人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)とともに、「ヘイトスピーチ、許さない。」〜杉田水脈議員に謝罪を求めます!という署名キャンペーンの実施や、要請文の送付などを行ってきた。経緯と概要をここに報告する。
経緯
2016年2月、女性差別撤廃委員会による日本審査がジュネーブで開催された。在日コリアン女性、アイヌ女性や部落女性、そして琉球/沖縄女性がこの場に参加し、長年にわたって複合的に周縁化され様々な困難を強いられてきたことを訴え、数々の問題を解決するきっかけとなる勧告につなげようと声を上げていた。
当時、国会議員ではなかった杉田水脈前政務官は、慰安婦に関する国連決議の採択に反対するためにこの審査に参加しており、その際の様子を伝える記事を自身のブログに投稿した。その記事には、必死に訴えるマイノリティ女性たちを隠し撮りした写真が掲載されていた上、その女性たちの姿を、「コスプレおばさん」「品格に問題がある」などと揶揄して嘲笑する文章が書き込まれていた。杉田水脈前政務官は同様の内容をSNSにも投稿し、これらは6年以上にもわたって放置されていた。一連の投稿による差別煽動の効果は凄まじく、当事者であるマイノリティ女性たちは深刻な差別の被害を受けてきた。
2022年11月末。これらの言動がヘイトスピーチであるとして国会で追及され、総務大臣政務官としての適格性が問われたが、杉田水脈前政務官(当時は政務官であった)は「つたない表現で傷つけてしましました」「差別をしたかのように伝わってしまったが、決してそのようなつもりはありません」などと答弁し、あくまでも差別はしていないという姿勢を崩さず、自身が行った差別煽動について謝罪することもなかった。また、法務省人権擁護局長は、杉田水脈前政務官のブログ記事がヘイトスピーチに該当するかと問われた際には、明確な回答を避けており、啓発の一環として法務省自身が掲げている「ヘイトスピーチ、許さない。」というスローガンの実効性はもとより、その意義にも疑義が生じる事態となっている。
IMADRが行ったこと
自身の差別行為を決して認めない杉田水脈前政務官、また差別言動を繰り返してきた人間を政府の要職に据えた政府、そして当該ブログ記事を「ヘイトスピーチである」と明言することさえできない人権擁護局に対し、12月2日、マイノリティ女性フォーラムとして、
以上の3点を求める要請文を、岸田首相をはじめとした関連省庁や杉田前政務官宛に送付した。
次いで、この問題に関心がある市民団体とともに要請文を改めて提出する必要があると考え、12月15日から1月10日まで賛同団体を募り、154の団体が賛同の声を送ってくれた。
また、団体だけではなく、個人にも賛同を呼びかけるため、12月27日より、Change.orgにて署名ページを立ち上げた。ちょうどこの日、杉田水脈政務官が実質的に更迭されたが、「被害者への直接の謝罪」、「法務省人権擁護局はブログ記事をヘイトスピーチと認めるべき」という2点については依然として解決されておらず、放置されている。不誠実な謝罪や、なし崩し的な更迭でこの問題を終わらせてはならない。私たちの呼びかけに呼応して、1月25日現在で48,000人の人びとが賛同署名をしてくださった。
賛同の声・コメント(一部紹介)
今後に向けて
杉田水脈前政務官はこれまでも、マイノリティ女性のみならず、セクシュアルマイノリティや性暴力被害者、女性といった数々のマイノリティ属性を抱えている人びとの権利と尊厳を踏みにじってきた。こうした加害の責任はもちろん彼女自身にあるが、根本的には、人種差別撤廃条約や自由権規約が定める差別扇動の禁止などの取り組みを行い、差別を許容しない社会を形作っていく必要があるだろう。
今後、これらのアクションを通じて拡がった声を、謝罪の実現や関係省庁への要望につなげていくために、IMADRは引き続きこの問題にコミットしていく。