IMADR第34回総会・記念講演を開催

2022年6月14日、日比谷図書文化館コンベンションホールにて第34回総会を開催した。全国から120人の会員が集まった。2020年、2021年とコロナ感染対策のためにバーチャル会議となったあとの対面による総会は、気持ちを新たにしてくれた。この間、活動の手法にさまざまな制約がかかり、それにより逸したものもあったし、新たに獲たものもあった。マイノリティの状況や差別の課題は決してよい方向に進んだとは言えない。世界の現状をしっかりと把握して、挑戦に立ち向かっていくことが求められる2022年である。総会終了後は、人身取引と闘うヒーローとして2021年に米国務省から表彰をうけた指宿昭一弁護士に記念講演をいただいた。その概要を以下に報告する。

 

総会記念講演要約 指宿昭一弁護士

指宿弁護士は現在、2021年3月6日に名古屋入管で命を落としたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんの遺族側代理人弁護士を務めている。当然、ウィシュマさんに関する話が講演の大部分を占めた。ウィシュマさんの公判が始まったことを伝えるニュース映像を会場で流してから指宿弁護士は講演を始め、ウィシュマさんが来日を希望した理由や在留資格を失った際の状況、そして同居していた男性からのDV被害を警察に訴えた際に在留資格がないことを理由に逮捕され、入管収容に至ったという全体の経緯について語った。

また、当初は帰国の意思があったウィシュマさんは、DVの加害者である男性から「帰国したら罰を与える」という手紙を受け取ったことで、帰国すれば殺されると認識し、日本での生活を希望することになったと付け加えた。

日本での生活を希望し始めたウィシュマさんに対し入管はプレッシャーを強めた。この頃からウィシュマさんの体調悪化の兆候があらわれていたそうだ。

体調が悪化していくウィシュマさんに対し、入管は一貫して適切な対応をしなかった。本人や支援者からの点滴の求めにも応じず、入院や通院の措置も講じなかった。また、尿検査の結果によれば飢餓状態であることが示されていたが、入管の非常勤医師と職員の間では、その検査結果を「見たか覚えていない」「見せた」とあからさまな食い違いがあるそうだ。

指宿弁護士は、ウィシュマさんが亡くなるまでの姿が記録された入管のビデオを視聴している。亡くなる前日のウィシュマさんの声について、指宿弁護士は「消え入りそうな泣き声」だったと語った。そのような状況にあっても職員は病院に連れていくことはせず、翌3月6日、呼びかけに反応しないウィシュマさんに職員も焦っている様子で、脈を取っていた職員は「冷たくなっている気がします」と話し、その後ようやく通報に至ったそうだ。

指宿弁護士は、ウィシュマさんの死は異常なことであるとした上で、入管問題に取り組んでいる身からすると「また起きたのか」と感じたとも語った。入管施設では2007年から現在まで、自死も含めて17人が命を奪われている。戦後の入管行政では「異常なことが繰り返し起きている」と指摘した。

日本における外国人の人権の扱いや入管行政について考えると、戦前からの認識が戦後も一貫して尾を引いている。「外国人は治安対策の対象、敵であり、管理の対象」であるとしてきた入管行政を根本から変えなければならない、と指宿弁護士は語気を強めた。

講演のまとめとして指宿弁護士は、公判が始まった裁判も先行きは明るいわけではない、と語った一方で、今までになく市民の声や関心を感じているとも話した。

「国家が作り再生産してきた差別を、止めよう、変えようとする市民の力がいま動き出している。それによってしかこの差別的な国を変えることはできない。今秋の再提出が見込まれている入管法改悪案を止めることが第一歩であり、そして二度とウィシュマさんのような事件を起こさせないことが必要である」と締め括った。

 

●IMADR 事務局