ダーバン会議から20年 あらたな取り組みをめざして

IMADR事務局

2001年8月31日から9月8日まで、南アフリカのダーバンで開催された国連反人種主義・差別撤廃世界会議(ダーバン会議)から今年で20年になる。アパルトヘイト廃止から間もない新生南アフリカでこの会議が開かれた意義は大きい。会議では植民地主義と奴隷制がレイシズムの最大の原因であると確認されたが、その原因の深部にメスを入れるような大胆な結果を導くには至らなかった。パレスチナ問題について名指しで非難されたイスラエルはアメリカとともに途中で会議から撤退した。そして会議終了3日後の9月11日にニューヨークで同時多発テロが起き、世界の空気は一変した。世界170カ国から2500人の政府関係者と4000人のNGO関係者が集まって開かれたダーバン会議は、その衝撃と現実に圧倒された。それから20年、レイシズムは今も世界のあちこちに厳然と在り続ける。
日本における人種差別撤廃の運動も長い。ダーバン会議に先立つ2001年2月、人種差別撤廃委員会(CERD)による日本審査がジュネーブで行われた。1995年12月に日本が同条約に加入してから初めての審査であった。2005年には人種差別に関する国連特別報告者のドゥドゥ・ディエンさんが日本を正式訪問した。日本における人種差別を歴史的・社会的文脈で捉え、ナショナル・マイノリティ(部落民、アイヌ・琉球先住民族)、旧植民地出身者(在日朝鮮人)そして外国人・移住労働者の三つに分け、公的機関における差別と被差別当事者の証言による差別の実態を分析・議論した包括的なディエン報告書が、2006年国連に提出された。CERDの日本審査、ダーバン会議、そして一番のきっかけとなったディエン特別報告者の訪問に関わった、部落民、在日朝鮮人、アイヌ民族、琉球民族そして移住者の当事者団体とIMADRなどの人権NGOが集まり、2007年2月、人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)が結成された。その目的は国際人権基準や国連人権制度を使って、国内にある人種差別の撤廃を目ざすことにある。
時を同じくして、2000年頃より在日朝鮮人に対する根深い差別が顕在化し始めた。2010年に入ってからはデモや集会さらにはネット上におけるヘイトスピーチが特に在日朝鮮人を対象に激化した。さらには、移民や難民に対する外国人嫌悪の発現、部落地区や部落出身者を貶めるためのネット上のアウティング、アイヌ民族に対するバッシング、沖縄の基地建設反対運動に対する誹謗中傷が続く。ダーバンを起点としたこれらNGOによる反人種差別の運動は、ヘイトスピーチ解消法の施行に象徴されるようにさまざまな成果をおさめてきたが、その一方で、さらに闘うべき目標も増えた。ダーバン20年を機に、ERDネットは国内および国際社会における人種差別の課題について、あらためて一から学びなおすための連続学習会を開催した。各回のタイトルと講師の名前だけになるが、以下に報告する。


ダーバン会議20周年と反レイシズム 
ERDネット連続学習会
第1回「ダーバン会議20周年と反レイシズム」
講師:前田朗さん(朝鮮大学校法律学科講師、ダーバン宣言日本語翻訳者)
2021年4月28日(水)14:00~15:30
第2回「戦後日本と植民地主義」
講師:田中宏さん(一橋大学名誉教授、外国人人権法連絡会共同代表)
2021年6月23日(水)18:30~20:00 
第3回「パレスチナについて知る:インターセクショナリティの視点から」
講師:役重善洋さん(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員)
2021年7月30日(金)18:30~20:00
第4回「複合差別とマイノリティ女性」 
講師:元百合子さん(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員、IMADR特別研究員)
2021年8月27日(金)18:30~20:00 
第5回「先住民族と植民地主義」 
講師:藤岡美恵子さん(法政大学非常勤講師、ダーバン+20反レイシズムはあたりまえキャンペーン共同代表)
2021年9月22日(水)18:30~20:00 
第6回「歴史修正主義とレイシズム」 
講師:板垣竜太さん(同志社大学教授)
2021年10月15日(金)18:30~20:00