持続的発展と 平和の鍵を握るジェンダー平等

女性が果たしてきた役割
2021年8月15日、タリバンがカブールに侵入し街を占領した。その瞬間から、私たちはアフガニスタンの女性と少女の生活は変わると思った。以降、私たちがアフガニスタンの女性や少女から見聞きしているのは、恐怖である。女性たちは、1990年代のタリバン時代の生活を覚えている。タリバンは女性の権利に関して立場を明らかにしていないため、恐怖はさらに高まる。タリバンは、イスラムの教義の中で女性の権利を尊重するという声明を出したが、その行動は信頼には至っていない。
権力を掌握したタリバンは組閣をしたが、女性は含まれていない。各省の副大臣にも女性は含まれていない。さらに、女性問題担当省は廃止された。一部の州は、女性は仕事に行ってはならない、外出は家族か親戚の男性の付き添いを必要とすると通達を出した。女性擁護センターが襲撃され、職員が嫌がらせを受けている。女性の人権擁護活動者のためのシェルターは定員に達している。
状況は暗澹としているが、アフガニスタンの女性たちはひるむことなく自らの権利のために闘い続けている。これからもそれは変わらない。女性たちは、何世紀もの間、権利のために最前線で闘ってきた。アメリカが女性に投票権を認めるより前の1919年にすでに女性たちは投票権を得ていた。1921年には国内初の女学校が設立された。2004年憲法は男女平等を謳っている。これまでの数十年、アフガニスタンにおける女性の権利擁護活動は国の平和と開発の前進において重要な役割を果たしてきた。

国際社会の役割
アフガニスタンのUN ウィメンはここにとどまり、女性と少女のために任務を遂行する。まず、女性の権利が擁護・促進されること、そして女性たち自らが直接声を届けることができるよう権利擁護に専念する。今、世界の目はアフガニスタンに注がれているが、永遠には続かない。たとえカメラが回らなくても、アフガニスタンの女性と少女の状況に光を当てることは、国際社会の重要な役割である。また、女性の権利擁護者が資源と保護を得られるようにすることも重要である。
UNウィメンのもうひとつの重要な活動は、女性の市民社会と運動を支援することである。世界的に見れば女性運動の組織はODAの1%にも満たない援助しか受けていない。私たちは、女性の市民社会組織に戦略的かつ意図的に投資することで、この傾向に対抗していく必要がある。
アフガニスタンの女性は世界で最も高い割合で暴力を受けており、そのほとんどが家庭内で起きている。コロナ以前より10人中9人の女性が、生涯で最低1回はパートナーから暴力をうけている。私たちは、女性に対する暴力の予防と対応のための活動を現地パートナーと協力していく。
最後に、UNウィメンはアフガニスタンの人道システムと協力して、紛争、コロナそし気候変動というアフガニスタンの三重の危機に対して、ジェンダーに配慮した対応を確保していく。女性団体や女性リーダーと協力して、タリバンの支配が女性と少女に与えた影響、社会・ジェンダー規範への影響、女性の人道サービスの利用への影響などを調査して毎月発表し、国内外の関係者がデータに基づいた分析を行えるようにする。
今、アフガニスタンは、これまでにない規模の危機に直面している。人口の半分が何らかの人道支援を必要とし、3分の1が次の食事がいつとれるのかわからない状況にある。医療インフラが崩壊しているため、コロナの第4波が来る危険性もある。アフガニスタンがこれらの課題を乗り越える唯一の方法は、ジェンダーを問わず、危機や災害を乗り越える道を見つけるためにすべての人が協力し合うことだ。公共の場や政治の場に女性が全面的に参加しリーダーシップを発揮することは、アフガニスタンの将来と持続的な発展と平和、そしてどのような危機からも立ち直ることのできる活気ある経済の実現に不可欠である。

2021年10月 UNウィメン、アフガニスタン事務所
(抄訳;IMADR)

出典:https://www.unwomen.org/en/news/stories/2021/10/experts-take-gender-equality-is-critical-for-the-afghanistans-future