報告 ウェビナー「東アジアにおける難民保護:変化と課題」

2021年4月2日、日本・韓国・香港のNGOによる東アジアNGO協議運営委員会(事務局IMADR)は、難民保護の問題をテーマにウェビナーを開催した。現在、それぞれの国において難民認定に係る法律改正が検討されており、それらが通れば、庇護希望者にとって状況はより厳しくなる。パネリストとして、日本から駒井知会弁護士、韓国からキム・ジーン弁護士、香港からNGO活動家のリ・レイチェルさんを招いた。これら3カ国で難民申請をしている方たちも招いた。

東アジアに共通する課題
COVID-19一色の2020年は例外であるが、この間、どの国も難民申請の件数は増加傾向にある。その一方で、難民認定の件数は少なく、2019年をみれば、日本、韓国は審査件数の0.4%、香港は1%であり、この数年どの国もほぼ横ばい状態である。難民は本国における生命の危険、拷問や残虐な処遇の危険、迫害の恐れなどを理由に他国に庇護を求めてくる。日本は1981年に難民条約に入り、従前の入国管理に難民認定を加えて法改正をした。韓国は1992年に難民条約を批准しており、2012年には地域で初めて難民取り扱い専用の法律となる難民法を制定し法務省内に難民課を設けている。香港は難民条約を批准していないが、独自の統一審査機構(USM)をもち、ノンルフールマン原則*に基づき審査をしている。
難民認定手続きにおける各国の問題も多くが共通していた。庇護申請の審査官は当然ながら難民条約と国際人権基準の理解と、当該国の政治・社会情勢などの知識が求められる。しかし日本では、駒井弁護士が指摘したように、審査官から「あなたは元気すぎる。本当の難民はもっと力がない」と言われる。韓国では、到着時に庇護希望を主張した人の93.1%(2019年)が正当な審査をうけることなく、入管のその場の判断で送還されている。キム弁護士や人権NGOは、庇護申請者の入国をすべて許可して審査すべきだと主張している。香港では、迫害を逃れてきたトランスジェンダーの人が、頑丈で口ひげがある、化粧はせずヒールも履いていない、声も野太いとして庇護を求める理由を認められなかった。
審査における他の問題として、一次審査では弁護士の立ち会いが認められていないこと(認定に関係のない質問や誘導的質問の恐れ)、面接時の通訳の質が保証されておらず、なかには不利となる誤った内容の通訳が行われていること(通訳者は審査側が調達)、不認定の理由が明示されず、短い異議申し立て期間にあらたな証拠を提示するのは難しいことなどが3カ国共通の問題としてある。

目ざすべきは難民の保護
このように難民認定に関して問題があるにもかかわらず、各国とも時期を同じくして関係する法律を改めようとしている。当局によるその理由は、審査の公平性の強化や難民認定制度の悪用の防止である。だが実際は、強制送還の合法化・強制送還拒否者の処罰化(日本)、虚偽申請の実刑処罰化(韓国)、長期収容の合法化(香港、日本)、入管職員の武装許可(香港)を始めとして、受け入れを制限したいという政府の意図が見え隠れする。駒井弁護士によれば、2019年12月末現在の入管センターの収容者1,054人のうち406人は難民である。日本の入管による無期限の収容問題に関しては国連から繰り返し勧告がなされてきた。日本から難民として発言をしたナイジェリア出身のエリザベスさんは、自身も収容の経験をもち、現在仮放免中であるにもかかわらず、全国の入管センターからかかってくる被収容の難民の相談に献身的に応じている。香港から参加した難民のAさんは、難民の声が届くようにしてくれるのは市民社会組織だけであると断言した。
今、日本ではNGO、弁護士、移民・難民による入管法改悪に反対する行動が連日続いている。韓国でもNGOや弁護士が反対のキャンペーンを行っている。香港でもNGOはSNSを使って反対の声をあげている。「平和に暮らしたい。だから私はここに来た」、エリザベスさんはそう言った。

*ノンルフールマン原則:迫害の恐れがある国・地域に難民を送還してはいけないという国際法上の原則。