国際人種差別撤廃デーを記念して、3月17日に「パンデミックの今 あらためて考える人種差別の根絶」と題した院内集会をオンラインで開催した。国会議員9人を含む120人が参加した。
集会では最初に、大阪大学大学院国際公共政策研究科の村上正直教授が、日本の人種差別撤廃条約加入以降に国内で見られた変化について、特に「私人間の差別の禁止」と「ヘイトスピーチの規制」という二つの観点から概説し、これらの領域において「差別の禁止」という規範が以前に比べて増してきていると解説した。その上で包括的な差別禁止法がないことで、私人間による差別が起きても被害者は訴訟をしない限り救済を得ることができず、泣き寝入りになる事例が多いことを指摘。改めて包括的差別禁止法と簡易で迅速な紛争解決制度の必要性を訴えた。ヘイトスピーチの規制については一部自治体が先行した取り組みを行っていることを評価し、自治体における対応措置を積み上げて、国レベルの規制を求めていくことが必要だと述べた。
●現場からの報告
集会ではその後、現場からの報告として4人が登壇。まずはヒューリアみえの松村元樹さんが、コロナ禍において、インターネット上での部落差別投稿が2020年には前年の2倍以上に増加していること、一方で、コロナ禍でデジタル化が進んだにもかかわらず同和地区においてはパソコンの普及率もネット利用率も全国平均を大きく下回り、機能的非識字の問題が深刻化したと報告した。
続いて在日本朝鮮人人権協会の朴金優綺さんがコロナ禍での朝鮮学校差別について報告。さいたま市がマスク配布対象から朝鮮学校幼稚園を除外し、文部科学省が「学生支援緊急給付金」制度の対象から朝鮮大学校の学生を除外したことを述べ、「命の差別」をやめるよう呼びかけた。朴金さんは埼玉朝鮮初中級学校幼稚園園長の「(マスク)一箱が欲しいのではない。子どもの命を平等に扱ってほしい」という言葉を紹介した。
移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)の安藤真起子さんは、コロナ禍の影響で多くの難民・移民の生活が困窮したにも関わらず、生活困窮自立支援制度や緊急経済施策から非正規滞在者や留学生、朝鮮大学校などが排除されたことを報告した。また、「移民難民緊急支援基金」に集まった寄付5000万円をもとに、一律3万円を1645人の必要としている人に支給したと報告した。
市民外交センターの上村英明さんは、アイヌ民族を初めて「先住民族」と明記する「アイヌ施策推進法」が2019年に制定され、さまざまな施策が始まったことを歓迎しつつ、法律には先住民族としての権利は何も保障されていないことを指摘した。そして、先住民族権利宣言が規定している漁業の権利や土地の権利、琉球民族にも共通する遺骨の権利などを認めることの重要性をあらためて明確にした。
●差別撤廃法制定へ
集会には人種差別撤廃条約国内実施モニタリングのための韓国NGO連合のリ・ワンさんが参加し、韓国で15年以上続けられている差別禁止法制定運動について紹介し、連帯のメッセージを送った。
最後に外国人人権法連絡会の師岡康子さんが「日本に人種差別はない」という言説に対し、朝鮮奨学会による調査結果を紹介し、歴史的に旧植民地出身者に対する差別が存在してきたこと、それが移民・難民政策にも引き継がれ、外国籍者に人権を認めない政策がとられていることを指摘した。国に対し、人種差別撤廃条約上の義務を履行し、差別政策の見直しと包括的差別禁止法の制定を求めた。