コロナ・パンデミックに伴い、もともと脆弱な状況にあったダリットコミュニティは深刻な影響を受けている。インド、タミルナドゥ州で活動するSASY(青少年啓発協会)の窮状に対して、IMADRは一般市民の方がたから頂いた寄付を原資に、緊急支援を行った。SASYの活動について報告が届いたので以下紹介する。
SASYは1983年にタミルナドゥ州で設立された人権団体で、地域のダリット、先住民族、女性、子どもたちの権利の保護と促進に取り組んでいる。台風や洪水などで被災したマイノリティの支援やコミュニティの復興、そして生活環境の改善などに関わってきた。
コロナ・パンデミックは、インドの構造的差別のもと社会的・経済的活動から排除されてきたコミュニティに壊滅的な被害をもたらした。コロナ・パンデミックは政府の災害対策の不備を露わにし、住民に健康不安を生じさせた。
都市封鎖は、露天商、リキシャドライバー、季節労働者、日雇い労働者、衛生労働者、農場労働者など、未組織セクターで働く人びとに深刻な影響をもたらした。他の災害とは異なり、コロナ・パンデミックは、これら未組織セクターで働くダリットや先住民族の生活を脅かし、貧困や健康被害のリスクを高めている。
アプリを使って人権モニター
封鎖宣言の後、SASYは緊急事態宣言下のタミルナドゥ州全域の状況とダリットと先住民族に対する暴力の監視を行ってきた。この監視活動で、これまで州内の20の地区で、ダリット、先住民族、女性、子ども、単身女性、移住労働者、高齢者に対する41の形態の残虐行為を記録した。SASYはまた、コロナウイルスと闘い、カースト差別と闘うために、これら地域の意識向上にも取り組んできた。
SASYは、全国ダリット・ウオッチ(NCDHR*の一部門)が立ち上げた新しいプログラムの “WE CLAIM APP” を使って、災害対応におけるインクルージョン(包摂)の監視にも取り組んでいる。このアプリは主に救援をまだ受けていない被災コミュニティや公的な支援スキームに登録していない被災コミュニティを割り出すことを目的としている。地方自治体とリンクづけされたボランティアは、アプリを使って関係者と当局との間に介入して、被災者に救援が届くようにしている。SASYは、このアプリを通して2750人以上の回答者と連絡がとれ、コロナ・パンデミックにおける政府のプログラムがコミュニティに届いているかどうかを確認する情報を収集している。
緊急支援
ダリット、先住民族、女性、子どもそして高齢者は社会的に排除され、限界線ぎりぎりに置かれてきた。今回の緊急事態は、こうした社会的排除と差別にさらに拍車をかけている。人びとは完全に否定され、抑圧され、国の救済から除外されている。このような状況下では、人道支援が強く求められる。この最悪の状況に対処するために物資の配給など緊急支援が必要となる。SASYは他州から出稼ぎにきた労働者が、ロックダウンのなか、仕事も食べ物もなく踠き苦しんでいるのを見つけた。
こうした時期に、IMADRから届いた支援で、SASYはヴィルプラム地区とカッダロール地区の81世帯に救援物資を配布した。そのうちビハール州とジャークハンド州から出稼ぎにきた世帯が21、残り60世帯は旧市街地区に住むダリットの家族であった。救援物資には、米、豆、砂糖、塩、食用油、ビスケットが含まれており、日々の食べ物にも苦労する脆弱な家族に提供された。一つのパッケージで一家族が約30日間生活できる。届いていないコミュニティに届けるための支援をしてくれたIMADRに心より感謝の言葉を送りたい。
*NCDHR(インド全国ダリット人権キャンペーン)は IMADRの友好団体で、SASYはそのパートナー団体である。