「北京+25」東アジア女性フォーラム開催

濱田 すみれ
NPO法人アジア女性資料センター事務局

1995年、中国・北京で開催された第4回国連世界女性会議(北京会議)から25年が経つ。会議で採択された「北京行動綱領」は世界的なジェンダー平等の指針となってきた。2019年8月12~13日、韓国・ソウルで、東アジアにおける行動綱領の実施レビューを目的とした、グローバル女性フォーラムが開催された。韓国、中国、日本のフェミニスト活動家が集まり、ジェンダー平等をめぐる状況と新たな課題を議論した本フォーラムの簡単な報告をしたい。
1日目のメインセッションでは、各国から女性に対する暴力、女性と経済、女性・平和・安全保障(以下、WPS)の3分野について報告があった。
女性に対する暴力では、韓国の報告が印象に残っている。2018年以降、韓国では#MeToo運動が大きく広がり、性暴力への社会的関心が高まった。政治や司法の動きも活発化し、性暴力調査に関する検察官マニュアルの更新、性暴力撲滅を目的とした政府評議会の発足、立法府では約150の性暴力関連法案提出(うち13法案が成立)などが実施されている。しかし、性的暴力被害の申し立ては増加しており、調査・司法プロセスでの二次被害は課題として残る。中国は初のDV法施行(2016年)やオンライン性暴力の問題を紹介し、日本は刑法の大幅改正(2017年)や伊藤詩織さんの性暴力事件などを報告した。
女性と経済では、韓国は女性の労働権に関する法律や政策の確実な実行の重要性を、中国は政府の外国への投資や援助事業による「南」の女性たちへの影響に関する調査・研究の必要性を強調した。日本は、アベノミクスの問題点を指摘し、経済成長のみを目的とした政策による外国人労働者や女性の権利侵害について報告した。
WPSで、韓国は、2018年以降の南北首脳会談と米朝首脳会談は、朝鮮半島および東アジア地域の平和にとって重要な進展だったと報告。他方で、東アジア各国の軍事費支出の増加は深刻な問題だ。安保理決議1325号の国内行動計画(以下、NAP)を策定した韓国と日本だが、どちらも実施・監視・評価プロセスにおける政府と市民社会間の協力体制には課題がある。中国はWPSに関連したNAPは採用しておらず、その予定もないとした。WPS分野の報告者だった私は、日本版1325 NAPの評価と問題点、日本軍性奴隷制問題をめぐる歴史修正主義者たちの動向、安倍政権下で進む軍事化について報告した。
フォーラム2日目のワークショップには、幅広い年代の女性たち約30人が参加。東アジア地域の課題と今後の取り組みを話し合った。一般分析では、北京会議に参加した東アジア地域のフェミニスト活動家は、各国のジェンダー平等に関わる法的・政策的枠組みを推進する重要な役割を果たしてきたことや、国内および世界レベルで女性運動を主導していることが確認された。しかし、課題は山積しており、さらなる取り組みが必要だ。
2日目の最後には、本フォーラムが東アジア地域のフェミニストたちの重要なプラットフォームになったこと、今後も参加者間のネットワーク構築のためにコミュニケーションを取り合うこと、「北京+25」に向けた協力を強めていくことが合意された。
ワークショップでは20代の参加者から、これまでの女性運動を若い世代が引き継ぐために、若い世代間ネットワークのプラットフォームや教育プログラムの提供が必要との提案があった。現在、国連でも若者参加の重要性が認識され、UN Women主導で“Generation Equality (世代間の平等)”キャンペーンが開始され、ユースタスクフォースが立ちあがるなどしている。日本でも多世代が参加するフェミニズム運動を目指して、私も努力したい。