アジア太平洋のマイノリティの教育と言語の権利

小松泰介
IMADR事務局次長 ジュネーブ事務所

マイノリティ問題に関する国連特別報告者であるフェルナンド・ドゥ・ヴァレンヌ教授は2017年に就任した際に、マイノリティの教育と言語の権利を彼の優先分野の一つにすると発表した。また、世界中のマイノリティと関係者との対話と協力を目的として毎年11月にジュネーブで開催される「マイノリティ問題に関するフォーラム(マイノリティ・フォーラム)」に、資金や距離の理由からヨーロッパ以外の地域のマイノリティが参加することが難しいという指摘を受け、ヴァレンヌ特別報告者は各地域でフォーラムを開くことを決めた。今年5月のブリュッセル(ベルギー)でのヨーロッパ地域マイノリティ・フォーラムに続き、9月20日と21日にタイのバンコクでアジア太平洋マイノリティ・フォーラムが開催された。この地域フォーラムにはIMADRも協賛団体として協力した。

フォーラム当日は、開会挨拶に続いて、「①マイノリティの言語教育に関連する権利」、「②マイノリティの言語教育に求められる公共政策」、「③マイノリティの言語の教育あるいは言語による教育の効果的実践」の三つのテーマで専門家による説明と提案がなされた後、参加者は勧告案を作成するためにそれぞれの分科会に分かれた。筆者は分科会②の司会を務め、インドネシア、ニュージーランド、インドからの専門家3人と共に、アジア各国から参加した政府関係者やNGO、教育関係者やマイノリティ当事者といった様々な背景を持つメンバーとの議論の進行を担った。

分科会ではまず、参加者それぞれの国や地域における課題の共有を行ったが、そこで見えてきたのはアジア太平洋と一口に言ってもそれぞれが異なる課題を抱えているということだった。例えば、インドネシアでは公式にはマイノリティは存在しないとされているために、マイノリティの言語の権利がそもそも認識されていない。一方インドでは、ヒンディー語と英語の公用語の他に各州の公用語が学校で使用されるという先駆的な実践が行われているが、親の都合などで他州に引っ越すと子どもの教育は全く馴染みのない言語によるものになってしまうという問題が指摘されていた。

同時に、地域で共通する課題も浮かび上がった。マイノリティ言語によって中等教育まで修了した子どもが高等教育に進もうとした時に、主要言語の能力要件によって困難に直面するという問題が共有された。また、マイノリティが自分たちの言語を使用することが権利として認められていないために、医療や司法において主要言語のみが使用され、言語マイノリティの人びとのアクセスを困難にしていることも共通する問題として明らかになった。また、マイノリティの言語による教育の多くは私立学校に頼っており、公教育におけるサポートが限られていることも共有された。

これらの共通課題を踏まえ、各国が多言語教育における公共政策の効果を分析すること、マイノリティの言語権を法的に認めること、言語マイノリティの教育、医療、司法へのアクセスを保障することなど、10項目に渡る勧告案が専門家の3人によって起草され、分科会で最終化された。その後の本会議でヴァレンヌ特別報告者と参加者全員に各分科会から勧告案が共有された。特別報告者はこれらの勧告案を歓迎し、アジア太平洋からの提言として11月末に開催される第12回マイノリティ・フォーラムに持って帰ると約束した。初のアジア太平洋地域でのフォーラムは参加人数こそ多くなかったが、その分内容の濃い議論が出来たといえる。今回の成功と反省を生かしつつ、今後の地域フォーラムにIMADRがまた貢献できれば嬉しい。

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