スリランカで起きたこと・これからのこと

ニマルカ・フェルナンド
IMADR名誉代表理事

6月6日のIMADR総会でフェルナンド元IMADR共同代表理事が行った記念講演を一部省略してここに再現します。

内戦終結からこれまで、私たちは、戦争が国や人びとにもたらした様々な問題の解決に力を注ぎ、法の支配と司法の独立の強化に向けた改革を先頭に立って進めてきました。国連の支援をえて、スリランカは移行期の正義のプロセスを進展させ、4つの戦後処理と人権救済に関する機関の設置を約束しました。それらは、失踪者のための局(失踪者の捜索と再発防止に関する問題を扱う)、賠償に関する局(戦争犯罪の被害など)、真相究明委員会(戦争犯罪や戦時下の人権侵害事件の究明)そして説明責任を追及する機構(戦争犯罪と人権侵害の責任者の特定化など)です。スリランカの国民および連立政権のリーダーたちは、和解の道に全力を傾けました。私たち市民社会は国連と緊密な対話を続け、移行期の正義において実質的な役割を果たしてきました。
それゆえ、4月21日のイースター・サンデー(復活祭の日)にコロンボなどで起きたキリスト教会と五つ星ホテルでの爆破攻撃は、私たちにとって、また私にとって、非常に衝撃的な事件でした。多くの無垢の市民が命を奪われ、多くの人びとが回復不能の傷を負い、数人の子どもたちが孤児となりました。この爆発の重大さは言葉で言い表せるものではありません。事件には、イスラム国(ISIS)とつながりをもつ宗教的極端者たちが関与しました。まだ生まれていない胎児さえも殺したこの卑劣極まる蛮行に関して、さまざまな分析が行われてきました。

マイノリティが直面する問題
世界中で、今、マイノリティコミュニティは台頭するレイシズムと外国人嫌悪に直面しています。IMADRは加害者にそうした暴力の責任をとらせるよう、関係国政府に継続的に要請をしてきました。私たちはすべての暴力を非難します。そして同時に、すべての国家は排除と服従を防止する環境を作り、宗教と民族の調和を促進しなくてはならないと唱えてきました。私たちは、権力の座にとどまりたい右翼政権のリーダーたちが焚きつけたと思われる政治的および宗教的な過激思想の問題に取り組んできました。南アジアではヒンドゥー至上主義や、ムスリムおよびダリットに対する暴力の高まりを目撃してきました。南アジアのすべての国は、そうした暴力やヘイトスピーチを行なった加害者に責任を負わせることを怠ってきました。これは、人権侵害をますます煽り、さらに多くの不処罰を永続化させています。
多くの人びとは仏教は平和的で寛容な宗教だと考えています。しかし、残念ながら、スリランカやミャンマーのような場所では、現実ははるかに複雑です。2012年、スリランカではボドゥ・バラ・セナという名の過激な仏教徒集団が出現しました。この集団によるムスリムの宗教的な場所や福音派教会センターへの攻撃が多数起きています。こうした状況について、国連の人権擁護者のセッションでも取りあげられ議論されました。しかし、内戦終結後の今この時代、ムスリムに対する暴力はさらに深刻な問題となり、2014年と2018年には暴動が起きました。加害者は処罰なしで放免されています。この危険で極めて不寛容な集団は陰謀説とヘイトスピーチを操って、ムスリムとクリスチャン(そしてそれ以外)のコミュニティを侮辱し、彼らへの暴力を煽動しています。
この状況はおそらく続くでしょう。最近起きた反ムスリムおよび反カトリック/クリスチャンの暴力ともつながっているとされる、これら加害者全員が逮捕され訴追されれば、それは重大で象徴的な意味となるでしょう。
スリランカで起きたイースター爆撃とニュージーランドで起きた銃撃は、人種差別や外国人嫌悪と闘っている私たちコミュニティに、これまで以上に働いて、平等と調和の文化を促進するよう強く促しています。スリランカの内戦で被害をうけた人びとに会うと、私はある種の絶望を感じてしまいます。今回の事件の後、カトリックのコミュニティの人びとと会い、ムスリムコミュニティの友人の話を聞いて、私は同じような絶望感にとらわれます。

人びとの結束こそが鍵
世界秩序は、人びとの心の奥底にある宗教や民族的アイデンティティの感情に沿って、人びとを分断しています。権力者は貧困や内部対立を利用して、人びとの願望を意のままに操り続けています。大国の政治は、コミュニティとして、そして民族としての私たちの存在の中枢に挑みをかけています。
スリランカで、私たちは手を結び、暴力の連鎖を止めるよう努力しました。スリランカの枢機卿が果たした役割は称賛されるべきものです。彼は国が最大の危機にある時、正真正銘の精神的リーダーシップを発揮して人びとをひっぱりました。そのようななか、政党が私たちの国をこの絶望から救いだせるかどうかは今後の大きな課題です。
世界のすべての人びとの結束は、多文化主義と寛容を促進し、人権の素晴らしい価値と人間の尊厳そして人間の安全保障を促進するうえでとても重要な役割を果たします。
かつて、部落解放同盟のリーダーのビジョンは私たちを勇気づけました。IMADRも、同じ国際主義の精神をもって運動を持続させることができるよう願います。
(翻訳:小森恵)

追記:4月21日の爆破事件のあと、スリランカに逃れてきたパキスタンからのクリスチャン難民は困難に直面している。事件のあと、クリスチャンであること、そしてムスリムの国から来たという理由により、近隣コミュニティのスリランカ人から住宅明け渡しを迫られるなどの扱いをうけ、政府が提供する避難民キャンプに難を逃れた。そうした人びとをスリランカ政府はパキスタンに強制的に送り返そうとしている(6月14日付けアムネスティ・インターナショナルの情報)。宗教的迫害を逃れ、安全を求めてやってきたスリランカから送還されれば、再び迫害の危険にさらされる。こうした苦境はクリスチャンだけではない。5月には反ムスリムの暴動がスリランカの2カ所で起こり、ムスリムが経営する店舗やレストランが襲撃され、モスクや住宅が打ち壊された。こうした状況を目の当たりにして入閣していた9人のムスリムの大臣が6月に辞任した。これ以上大臣の席に留まれば、さらに多くの暴力が起きると考えた上のことであった。宗教的マイノリティの問題について、IMADRはアジア委員会と協力して今後も追跡していく。(小森)

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