第31回IMADR総会開かれる

阿部 藹
IMADRパブリケーション・オフィサー

6月6日、第31回IMADR総会が日比谷図書文化館コンベンションホールで開催され、100人以上の会員が参加した。総会の様子を写真と共に報告する。

●2018年度活動報告と新年度の活動計画案
総会ではまず、小森恵事務局長代行が2018年度の活動報告を行った。2018年度は例年の事業に加え、二つの大きな活動に取り組んだ。一つはIMADR創立30周年を記念した冊子の出版やシンポジウムの開催などの記念事業、もう一つは国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)と共催した世系差別撤廃のための国際会議の開催だ。この会議にはマイノリティ問題国連特別報告者の在任中に「カースト及び類似した制度に基づく差別」を調査したリタ・イザック・ンジャエさんや日本の部落解放同盟のリーダー、およびアジア各国のダリットNGOの代表が参加し、世系に基づく差別撤廃宣言が採択されるなど、大きな成果を上げたことが報告された。
続いて今年度の活動計画案が提案された。今年度は引き続き1)ダリット・部落差別の撤廃 2)人種差別撤廃とマイノリティ・先住民族の権利確立 3)国際人権保障制度の発展とマイノリティによる活用の促進 4)ビジネスと人権 の活動課題に国際提言と国際連帯の視点を重視しながら取り組んでいくこと、また資金作りにつながるような活動方法を探ることが提案された。国際連帯の視点からは、世界の世系コミュニティや団体とのつながりをさらに強化すること、また東アジアにおいて反人種差別に取り組む団体とのネットワークや連携を模索することなどが計画に盛り込まれている。ジュネーブにおいては国連人権システムの活用に関するトレーニングを各国のNGOsに提供したり、国連人権高等弁務官事務所や人種差別撤廃委員会、市民社会(NGOs)といったステークホルダーとの協力を強化すること、また国連条約機関ネットワーク(TB-Net)に参加して、条約機関の向上のために他のNGOと連携して行動することを提案し、いずれも承認された。

●組織体制
西島藤彦事務局長より組織体制の見直し作業についても報告が行われ、新しい理事会の体制案が承認された。新しい組織体制では、長年IMADRの代表理事を務めた武者小路公秀とニマルカ・フェルナンドがその職を退き、名誉代表理事に就任した。そして新代表理事に、組坂繁之(元副代表理事)が就任した。また新たに理事としてジェンダーと子どもの保護専門家であるヘレン・ザックスタインさん、元国連人種差別撤廃委員のアナスタシア・クリックリーさんが加わり、『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議を代表する理事として、新しく山下義円さんが就任した。

●記念講演
第二部では、武者小路公秀、ニマルカ・フェルナンド両名誉代表理事による記念講演が行われた。
武者小路名誉代表理事は初めてアジアで始まった国連を舞台にした国際人権運動として、IMADRが今後も活動し続ける意義があることを強調した。また、資金難の中でもジュネーブの国連人権理事会で活動を続けていくことの重要性について述べた。

ニマルカ・フェルナンド名誉代表理事は、スリランカで4月21日に発生した連続爆破攻撃がもたらした影響も含め、スリランカにおける民主主義回復のプロセスと現状について報告をした。スリランカの連続爆破攻撃やその数か月前にニュージーランドで起きたイスラム教徒をターゲットにした銃乱射事件に触れながら、宗教や人種による社会の分断が深まっている現代の社会において、差別や外国人嫌悪の撤廃のために一層の努力が必要であると述べた。最後に会場の全員でスリランカの爆破攻撃の犠牲者に対して黙祷を捧げた。
武者小路公秀さんとニマルカ・フェルナンドさんの長年にわたる反差別国際運動への献身を称え、会の最後には組坂新代表理事から二人に記念品が贈られた。
総会に寄せられた会員の方々からのメッセージ
(順不同・敬称略)

◆反差別国際運動設立31周年にあたりその長きにわたる、差別と人種主義の撤廃にむけた真摯な取り組みにあらためて敬意を表します。部落差別からの解放を求める運動の成果として2016年12月に「部落差別解消推進法」が施行され、「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」と合わせて「差別解消三法」施行から2年が経過しました。しかし、法施行後の社会の状況をみると、まだまだ厳しい差別の状況があります。本総会が、拡大する差別・排外主義と闘い、世界から差別をなくすための取り組みをすすめる重要な総会となることを祈念します。部落解放・人権研究所もこうした変化に遅れることなく調査研究、教育啓発の諸事業に全力で邁進していく所存であります。<部落解放・人権研究所>
◆「戦争のできる国」に向かっている日本は、息苦しい社会になってきています。正しい情報を流さない政府、批判しないメディア…まさに日本の民主主義は危機的です。一人ひとりの人権が大切にされる社会を目指して、連帯し声を上げていきましょう。<I女性会議>
◆国際的な人種差別撤廃こそ、世界平和への道しるべとなると確信しています。<丸子孝仁>
◆世界中のあらゆる差別や偏見に反対するだけでなく、それの根底にあるものを掘り起こし、差別や偏見のない世界にしてゆくために、私なりに努力してゆきたいと思っています。<細川みゆき>
◆皆様の御活躍、IMADRの重要な役割、いつも強く感じて、情報に接して、勉強させて頂いています。<村井茂>
◆いつも貴重な情報をありがとうございます。<山口渉>
◆これからも皆様と共に学び、活動していきたいと思います。<ジェレノー治美>

今年も無事に総会を開催し、活動計画について承認頂いたことに感謝する。今年度もさまざまな団体および個人の皆様と協力して取り組みを行なっていきたい。