琉球/沖縄の人民の自己決定権

島袋 純
沖縄国際人権法研究会 共同代表

 

沖縄国際人権法研究会は研究者や市民有志からなる研究グループで、2016年に発足した。当初からIMADRの協力を得て琉球/沖縄の抱える諸問題を国際人権法の観点から捉え直し、国連へ情報提供することを活動の主軸に置いている。2017年のUPR日本審査に対しても多数の報告書を他団体と共同で作成し、提出した。数多くの権利の中で根幹となるのが「自己決定権」と考えている。
国際人権自由権規約、国際人権社会権規約の第一条は、自己決定権をもつ主体が「人民(peoples)」であることが明記されている。二つの人権規約の第一条が同じ文章であり、また、その第一条に集合的な権利とされる自己決定権が明記されていることには重大な意味がある。つまり、国際人権条約は、集合的な権利である自己決定権をその個人が所属する集合体に認めることこそが、人権保障の基本となることを明示した。
研究会では、琉球/沖縄の人びとの自己決定権とは何かについて多様な議論を蓄積してきた。この議論をここで整理する紙面の余裕も能力もないので、琉球/沖縄について、人民の自己決定権についてどのような問題があるのか、沖縄国際人権法研究会が人権理事会普遍的定期的審査に提出した文書を引用しつつ紹介したい。

 

先住の人民としての認定
沖縄、日本の南端部分は、1879年に至るまで琉球王国と呼ばれる独立した領域であった。1854年に琉米修好条約、55年に琉蘭修好条約、59年には琉仏修好条約を締結しており、当時の国際的な地位を認められて存在していたが、日本は1879年に武力による威嚇によって琉球国を強制的に併合した。これはウイーン条約法条約第51条に違反する。以後、強制的な同化政策の元に、独自の歴史、言語、文化を継承する権利を侵害されていき、また土地の権利をはじめ様々な権利を侵害される構造的差別があり、現在に続いている。
国連自由権規約委員会は、第5回日本政府報告書に対する審査総括所見の中で、「琉球/沖縄の人びとを国内法で先住の人民と明確に認め、彼らの継承文化や伝統的生活様式を保護、保存及び促進する特別な措置を講じ、彼らの土地についての権利を認めるべきである。」と勧告した。さらに第6回日本政府報告書の審査総括所見おいては、「伝統的な土地や資源に対する権利、あるいは彼らの児童が彼らの言葉で教育を受ける権利が認められていないことに関して懸念を改めて表明する。締約国は,法制を改正し,琉球及び沖縄のコミュニティの伝統的な土地及び天然資源に対する権利を十分保障するためのさらなる措置をとるべきであり,それは,影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利を尊重しつつ行われるべきである」と明白に指摘している。

 

「先祖伝来の領域」及び「土地の権利」に対する侵害
明治政府は、琉球/沖縄の人びとを排除した日本政府の出先機関である沖縄県庁を設置し、琉球/沖縄の人びとの先祖伝来の領域に関して、所有や利用の近代的形態を導入した。沖縄県庁は、琉球/沖縄の人びとが利用していた田畑や住宅地をそれぞれの個人の私有地として所有権を認めたが、多くの山林等の共有地(commons)に対して、日本政府が所有し管理する国有地とした。さらにその土地の一部を琉球/沖縄の人びとの同意なく売却の対象とするなど、明白に先祖伝来の領域に対する侵害に該当する事例があった。1951年、日本政府は、日本の国会と政府に、琉球/沖縄の意思を反映する代表が一人もおらず、琉球/沖縄の意思を確認する場もいっさい設けないまま、琉球/沖縄の立法・行政・司法の全施政権の米国への移譲を条件とする主権回復の講和条約締結の交渉と締結を行い、さらに日本の国会はそれを批准した。
琉球/沖縄を支配した米軍政府も、琉球/沖縄の人民の自己決定権を認めなかった。27年間、琉球/沖縄の人民は、充分な人権の保護がない米軍の直接支配に苦しんだ。米軍の支配のもとに、日米両政府はさらに日本本土の米軍基地を沖縄に移転させた。結果として沖縄本島の18パーセントの土地が、米軍基地として占領され続けており、現在まで米軍基地に起因する犯罪や事故で琉球/沖縄人の生命の安全や健康が脅かされている。その後も日米両政府は、直接住民投票や琉球/沖縄の議会の議決によって表された琉球/沖縄の人びとの意思を無視してきた。
琉球/沖縄の人民の意思をまったく無視したまま1969年米国から施政権の日本への返還が合意され発表された。沖縄の米軍基地については、人権侵害の上に建設された事実を無視し、恒久的な存続を保障すること、そして日本の領土にありながら日本の主権がまったく及ばない排他的管理権を米軍に与えることを定めた合意である。この米軍基地の存続と、米軍の排他的管理権は、琉球/沖縄の人びとの人権を侵害するものであり、そのため、基地による人権侵害を合法化する琉球/沖縄にしか適用されない特別法が、琉球/沖縄の人民の合意もないままに制定された。

 

発展の自由を含む経済的、社会的及び文化的な権利の侵害
国連人種差別撤廃委員会の第3回~第6回日本政府報告書に関する総括所見は「沖縄の人びとが被っている根強い差別に懸念を表明する。沖縄における不均衡な軍事基地の集中が住民の経済的、社会的及び文化的権利の享受を妨げている」と示している。
1972年の日本への琉球/沖縄の施政権返還においては、琉球/沖縄にのみ適用される沖縄振興開発特別措置法が制定され施行された。琉球/沖縄の人びとの同意を得るための投票を行っていない。この法律では、日本政府が沖縄の経済的、社会的及び文化的発展計画を策定し決定する権限を持つとしており、沖縄の意見を聞く場は設けられるものの、米軍基地に関連する問題については、この計画の対象でないとされてきた。

1972年以来、沖縄振興開発計画を実現するための沖縄振興開発予算の主要な編成権も日本政府にある。琉球/沖縄の人びとには必要な予算編成の最終的な権限がなく、個々の事業すべてを日本政府に補助申請し、日本政府が最終的に予算を確定する仕組みは変わらない。この仕組みは、国連先住民族の権利宣言(UNDRIP)の3条及び4条を侵害している。

 

FPIC原則(自由で事前の情報に基づく合意)の無視
国連自由権規約委員会の第6回日本政府報告書に対する審査総括所見おいては、「伝統的な土地や資源に対する権利,あるいは彼らの児童が彼らの言葉で教育を受ける権利が認められていないことに関して懸念を改めて表明する(第27条)。締約国は,法制を改正し,琉球及び沖縄のコミュニティの伝統的な土地及び天然資源に対する権利を十分保障するためのさらなる措置をとるべきであり,それは,影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利を尊重しつつ行われるべきである」と明白に指摘している。
「先祖伝来の領域」に関する権利を認めない法制度の中で、最高裁の決定のもとに日本政府は「事前に情報を得た上で自由に関与する権利」(FPIC原則)を一切無視して、秘密交渉において仲井眞知事(当時)に米海兵隊の辺野古新基地建設のための沿岸部の埋め立てを承認させ、引き続き現在も強引に建設を進めている。この埋め立て承認の手続は、国連先住民族の権利宣言26条、27条、30条に違反している。

以上、沖縄国際人権法研究会の2017年普遍的定期的審査提出から引用したが、現在の自己決定権のもっとも具体的な権利内容を示す国連先住民族の権利宣言に基づいて多様な人権と自己決定権の侵害の実態が明らかになっていると言える。

 

※沖縄国際人権法研究会ではindigenous peoplesを先住の人民と呼んでいます。

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