認めあい尊重しあえる社会形成のために

角本尚雄(かくもと しょうゆう)

『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議議長、IMADR-JC理事

 

1979年の第3回世界宗教者平和会議における差別発言、伝統仏教教団を中心に確認された差別戒名、さらにそれぞれの宗教教団内で提起された差別事件において、私たち宗教者・宗教教団はいくつもの糾弾を経験し、ようやく自らが抱える差別体質に気づかされました。

 

部落差別解決への取り組みについて、既に先行して取り組んでいた教団を中心に実行委員会が組織され、宗教者が連帯して取り組む以外にその方途が無いことが確認されました。そして、「同和問題にとりくむ全国宗教者結集集会」を開催するため、全国の宗教教団によびかけ文が送付されました。その一節をご紹介します。

 

 

「ここに、あらためて、深き反省のうえに、教えの根源にたちかえり、『同和問題』解決へのとりくみなくしては、もはや、日本における宗教者たりえないことを自覚し、ひろく、宗教者および宗教教団に、実践と連帯をよびかけるものである。」

 

 

1981年3月17日の結集集会には、よびかけを受けた53教団・3連合体から989名が出席し、その総意のもとで同年6月29日、「『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議」(同宗連)が結成されました。現在は64の加盟教団と、協賛団体の新日本宗教団体連合会、全日本仏教会、日本キリスト教協議会が加わり、連帯して取り組んでいます。

 

私たち宗教者・宗教教団にはそれぞれの信仰と教義があります。それぞれの教えに違いはあれど、本質は「全ての人を苦悩から解放し、真の幸福を実現する」ことであります。そのために私たちは、自らの信仰に基づいて行動していかなければなりません。「同宗連」には信仰や教えの異なる者たちが集い、「部落差別の解消」という命題のもと連帯しています。いたずらに期間を誇るべきではありませんが、異なる信仰をもつ者たちが、お互いを認め合い連帯し続けていることは、世界中を見渡しても非常に希有なことでしょう。

 

部落解放運動によって、市町村等で戸籍を自由に閲覧することができなくなりました。しかしながら不正な身元調査は後を絶たず、「部落地名総鑑事件」が起こり、近年では「プライム事件」が起こりました。宗教界においては過去帳に類する名簿が身元調査の標的にされてきました。「同宗連」では結成直後からこの問題への対応を協議し、「身元調査お断り」運動を展開してきました。残念なことに、近年、運動の風化を思わせるような案件が続いています。これまでの取り組みを再点検するとともに、継続性を持った活動の展開が必要であると感じています。

 

昨今の社会状況を鑑みますと、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)によって様々な思想や価値観が共有され、国や民族という枠を超えたネットワークが確立されています。IMADRのような人権NGOが世界中の被差別当事者と連携することで、国際的な人権状況は少なからず良い方向に向かっていると存じます。しかしながら、これらのSNSツールは思想や価値観を安易に数値化するため、新たな差別構造を生み出す危険性もはらんでいます。さまざまな思想や価値観を認めあい、尊重しあえる社会形成のため、「同宗連」だからこそ発信できることもあるでしょう。人権社会確立のため、今後もIMADRと連携していきたいと存じます。