人身売買問題を訴える―人間は売りモノではありません!

山岡 万里子(やまおか まりこ)
ノット・フォー・セール・ジャパン(NFSJ)代表

「人身売買(取引)は日本でも起きています」と言うと、たいていの人が目を丸くする。JK(女子高生)産業で危ない目に遭う少女、モデルになれると騙されAV(アダルトビデオ)に出演させられる女子大生、監禁され売春を強要される出稼ぎの外国人女性、時給300円で酷使される技能実習生……と例を挙げると、しかし、多くの人が「なんだ、そういう問題なら知っているよ」という顔をする。ただしそれが人身売買だという認識は無い。メディアもそうは取り上げない。けれどもこれらが人身売買に当たるのは国際社会の常識だ。

 2011年創設のノット・フォー・セール・ジャパンは、人身売買・現代の奴隷制問題に取り組む小さな団体だ。IMADRをはじめ関連諸団体と共に「人身売買禁止ネットワーク(JNATIP)」として政府との直接対話に参加しつつ、性的人身売買の実態を描いたアメリカのドキュメンタリー映画『ネファリアス――売られる少女たちの叫び』の上映会を柱に、講演、イベント出展、情報発信など主に啓発分野で活動している。人身売買という犯罪が蔓延し、その結果奴隷労働を強いられる人は世界に3,000万人以上、犯罪収益は15兆円とも言われる現状を伝え、「日本でも起きている、いや先進国の中では最悪のレベルである」と警鐘を鳴らす。けれども前述のような反応も多く、人身売買問題を伝えるのは難しいと感じる。ただでさえ見えにくい犯罪である上に、貧困、格差、差別、政情不安、当局の腐敗、環境破壊、経済・通信のグローバル化など多くの要因が絡み、解決への筋道が立てにくい問題だからだ。

 それでも3年半やってきて、徐々に浸透している手応えもある。イベントや講演のアンケートからは、その日、参加者の意識が確実に変わったことが見て取れる。多くの人が口コミで伝えてくれて、学校、教会、NGOのみならず企業や大使館からも、『ネファリアス』上映会の問い合わせが来る。個人で会場を借りてくれた女性、上司を説得し開催にこぎつけた団体職員、一から団体を立ち上げ人身売買問題を広めようとしている学生……。多くの高校や大学でもこの問題が授業で取り上げられ、「人がモノ扱いされる社会でいいのか?」と学生たちも関心を持ち、研究テーマに選んでいる。

 啓発活動は成果が見えない。具体的に被害者を、そして加害者を減らしていくためには、啓発ばかりやっていても意味がないのではないか、という思いも正直ある。ただ、今はまだ種蒔きの段階で、誰か伝える人が必要なはずだ。「今日、話を聞いてくれたこの人から、解決への道が開けるのだ」と信じている。そう、今この記事を読んでくださった、あなたから。

IMADR
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