IMADR第29回総会・記念講演

IMADR第29回総会・記念講演

 

2017年6月9日、IMADR第29回総会が東京・日比谷コンベンションホールで開催された。2016年の総会でIMADRは国際組織と日本委員会が統合されて1年、今後もIMADRはジュネーブを国際提言の重要な拠点としつつ、日本、南アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカにおける差別との闘いを国際連帯でつないでいくことが確認された。

この数年、欧米をはじめ世界各地で台頭してきたむき出しの人種差別と排外主義は、IMADRを含む世界のNGOが大切にしてきた人権の価値や国際人権基準を否定する動きであり、私たちはそれに対してNO!をつきつけることが確認された。

活動テーマにおいては、ダリット・部落差別の撤廃、人種差別撤廃とマイノリティ・先住民族の権利確立、国際人権保障制度の発展とマイノリティによるその活用の促進に重点を置いていく。その中でも、人種とジェンダーに基づく差別の交差性を今後も重要な課題としていく。また、差別の問題をSDGs(持続可能な開発目標)の視点からも捉えていくとともに、ますます重要となるビジネスと人権の課題をIMADRの活動テーマの中に位置づけていくことが確認された。

IMADRは2018年には創設30年を迎える。組織的にも運動としても節目の年となる。引き続き会員、賛同者の支持と協力をえながら、世界から差別をなくすために努力をしなくてはならない。

総会では、北海道アイヌ協会の阿部ユポさんと、琉球新報報道部長の新垣毅さんに記念講演をしていただいた。その内容を事務局で要約し、以下、掲載する。

 

 

アイヌ民族の権利の実現に向けて

阿部 ユポ(あべ ゆぽ)

北海道アイヌ協会副理事長

 

明治時代、日本は国策として海外移住を進めたが、移住先での過酷な労働や土地取得の難しさから海外移住をやめ、今度は北海道に行けと言った。被差別部落の人たちにも北海道に移住しろと言った。これは北海道新聞の「北海道開道100年」に書いてある。

150年前、それまで蝦夷地と呼んでいた私たちの土地を江戸末期に北海道、樺太、千島を探検したことで知られる松浦武四郎の意見書を参考にして明治政府により北海道と呼びかえられた。その時まで函館、松前、江差にしか日本人はいなかったが、日本の25%もある広大な土地をアイヌから一方的に取りあげた。そこは、蝦夷地でもなければ、北海道でもない、アイヌの土地=アイヌモシリだ。人が住む静かな大地という意味である。それをどうして、アイヌ民族に一言の相談もなしに奪い取れるのか。

そしてアイヌ言葉を禁止し、宗教も文化も、何万年も営んできた生業である狩猟、漁労、採集をすべて禁止しただけでなく、アイヌに和人の姓名を名乗るように強制した。いわゆる「創氏改名」である。そして、1871(明治4)年から1873(明治6)年にかけて戸籍法を制定して、アイヌ民族を強制的に日本国民にした。

1997年に人種差別撤廃委員会から出された「先住民の権利に関する一般的勧告23」の項目5には「そこにいた先住民族の同意なしに奪った土地、領土、資源は返しなさい」といった内容が書かれている。1997年の二風谷ダム裁判でもアイヌ民族を先住民族と認めた。しかし日本政府は判決を20年間も無視している。自分たちのことは自分たちで決めるという権利を宣言にしたのが、「先住民族の権利に関する国連宣言」(2007年9月)であり、日本政府も採択に賛成した。菅官房長官がオリンピックまでにアイヌに関する法律を作る、世界に恥ずかしくない法律をつくると約束した。もし約束が破られたら抗議しなくてはならない。これからも先住民族の権利を勝ち取るために活動を続ける。

 

 

沖縄の自己決定権

新垣 毅(あらかき つよし)

琉球新報報道部長

 

沖縄は最近、差別という言葉を使うようになった。

 

それまでは不公平、本土も応分の負担すべき、二重基準と言われてきたが、最近は「沖縄差別」であると沖縄の人たちが自ら言うようになった。

 

物理的差別、国土面積の0.6%しかない沖縄に米軍施設の7割が集中しているのは差別だと。米軍施設には日本の法律が適用されず、住民の人権や環境権が侵害されても、日米地位協定などによって米軍は最優先で特権的に守られている。

 

加えてここ1、2年、沖縄に対するヘイトスピーチ、ヘイトクライムが目立ってきた。ヘイトスピーチ解消法の保護対象が「本邦出身者以外」となっているため、アイヌ民族や沖縄は保護対象に含まれないが、とくに基地建設をめぐる県対政府の法廷闘争に関して、「これだけ北朝鮮の脅威がある時に沖縄は何をわがまま言ってるのか、黙れ」となる。日米同盟こそが国益であり、その国益に反することをする奴らはテロリストだというレッテルが貼られ、物理的差別という本質が見えなくなり、人種差別的な様相まで帯びてきている。2016年10月の機動隊員による高江での「土人」発言に対し、「差別表現ではない」とする閣議決定が出た。国の指導者や権力者が公然と差別を言うことはいかに罪深いことか。「ニュース女子」というTV番組では、沖縄で反基地運動をしている人たちを公然とテロリスト呼ばわりするまでに至っている。

 

自衛隊の南西諸島の配備は、中国有事の際の米軍の作戦にこたえるもので、住民が攻撃の的にされたあと島を奪い返すという作戦である。「ああ、また72年前の沖縄戦のように私たちは捨て石にされる」と人びとは感じている。沖縄戦の体験、もっと遡れば琉球処分による日本への併合、サンフランシスコ講和条約のもと米国を施政権者とした人権無視の施政、1972年の復帰後も、憲法より日米安保を重視した裁判・判決が繰り返されてきた。

 

いま騒がれている「北朝鮮の脅威」をもとに沖縄の基地問題を捉えるのか、それとも「沖縄の歴史」という視点にたって問題を捉えるのかで雲泥の差がある。「これだけ中国・北朝鮮の脅威がある中で沖縄の米軍基地は必要だ。地政学的に沖縄になければいけない」という誤解は、沖縄米軍基地の75%、兵力の60%を占める海兵隊への誤った世論の認識から来ていると考える。ミサイル戦争の時代、海兵隊の任務は人道支援とか災害救助、テロの特殊作戦、物資の補給作戦など戦争の中心的機能から遠ざかっており、中国などの脅威から日本を守るような部隊ではない。

 

一方で、歴史を正しく捉えて沖縄を解放していこうという捉え方がある。両者の議論はなかなか交わらず、認識の溝が埋まらない。こうした状況に対していま沖縄は異議を申し立て、「自立」「自己決定権」という言葉を語り始めている。

 

2015年、翁長知事が国連人権理事会でスピーチを行い、沖縄の自己決定権が侵害されていると訴えた。沖縄でこれらの運動に取り組む人びとの間では、沖縄を先住民族として位置づける意見がある。先住民族として保有している土地の権利が侵害されてきたとする主張ができないだろうか。1993年、クリントン大統領(当時)がハワイ併合に対する謝罪の決議文にサインしたのは併合から100年後のことだった。歴史的な不正に対して先住民族などに償いをする流れが世界的にある。この潮流に沖縄も乗ることができないだろうか。日米同盟を優先する政策は沖縄の人権を侵害してきた。それに対して国際法を使ってでも訴えなくてはいけないところに来ているのではないかと考える。

 

 

*上記は阿部ユポさん、新垣毅さんの報告を事務局にてまとめたものです。