院内集会「レイシズムを、ゼロに。」に寄せられた海外からの連帯メッセージを紹介する。
ドゥドゥ・ディエンさんからのメッセージ
元国連人種差別に関する特別報告者である私は、今日、皆さまとともに国際人種差別撤廃デー集会に参加いたします。
ジョージ・フロイド殺害後の世界の流れのなか、日本を含むすべての国が、この日に立ち止まり、レイシズム、人種差別、外国人嫌悪および不寛容の発現、根本原因、そしてそれらとの闘いでとった行動と進展について、深く考察することは非常に重要です。
歴史、地理、ナショナル・アイデンティティのイデオロギーは、すべての社会で人種差別の誕生と示威のための条件を作り出してきました。より正確には、人種、文化、宗教に基づく共通人類の否定的な階層化を行ってきました。
レイシズムは、その根源的な原因を特定し、認識し、分析し、それを根絶するための法的、社会的、政治的、経済的、教育的政策を立案することなしには撤廃できません。この目的のためには、ナショナル・アイデンティティと、社会の変革の原動力としての多文化主義の歴史的、文化的、人間的なプロセスの間の緊張を理解することが重要です。動員すべき主要な力は、社会の倫理的・精神的価値、歴史の記述と教育、統合に基づく国内法制度の構築、人権法と人道法の国際文書の尊重と実施であります。
2001年に反人種主義・差別撤廃世界会議が全会一致で採択したダーバン宣言と行動計画は、レイシズムと闘うための総合的なロードマップです。皆さまをはじめとした市民社会組織はこの歴史的な文脈で支援されるべきです。
ドゥドゥ・ディエン
元人種差別に関する国連特別報告
フランス国立奴隷制記憶財団運営評議委員
ユネスコ「奴隷の道」プロジェクト科学委員会副委員長
アナスタシア・クリックリーさんからのメッセージ
2014年の人種差別撤廃委員会日本審査の際、委員会の議長を務めて以降、私は日本の皆さまとのつながりをもってきました。その立場より、人種差別禁止法制定を求める皆さまの声を全面的に支持します。執拗な差別的意識を取り除くことは難しい挑戦ですが、法律はそのための礎になります。法律なくして、ほんとうの意味での進歩はありえません。
EU基本権庁のチェアパーソンを務める私は、EU加盟国で人種差別を経験している人びとにとって、人種差別に関するEU指令がどれほど大きな違いをもたらすのかということを目の当たりにしてきました。また、指令の実施手順をより強固にする必要性と、指令の条項が移民労働者や国際的保護を求める人びとを含むすべての居住者に適用されるよう唱えていく必要性を認識しました。私は、皆さまが求めている法案に、これらの重要な条項が必ず含まれるようにするよう促します。
日本そして日本において人種差別を経験している人びとは、人種差別撤廃条約が定めているように、あらゆる形態の人種差別を網羅する包括的な反人種差別法を必要としています。私の経験より申しあげますが、一、二の問題に対処する法律だけでは十分ではありません。それはむしろ抑圧の階層を作り出し、最悪の形態の差別を経験する人びとを保護することができません。
人種差別は、長年にわたる優位性の遺産と、奴隷制を正当化した経済的・文化的利益に基づくものであり、人種差別撤廃条約の言葉を借りれば、「目的においても効果においても」今日に至るまで続いています。それは制度や機構に埋め込まれ、それにより集団や個人は体系的な人種差別を経験してきました。
女性たちが経験する人種差別はジェンダーに基づく差別でもあります。真の違いをもたらすためのアクションの出発点として、交差的な差別を分析することが求められています。
日本は人種差別撤廃条約に加入することで人種差別を撤廃すると誓いました。市民社会の努力もあり、日本において撤廃に向けた歩みは始まっています。世界が何もしないことによる影響はますます恐ろしいものになりつつあるとき、皆さまの声は次の重要なステップとなります。皆さまの闘いには、遠くから幅広い連帯が集まるものと確信しています。
アナスタシア・クリックリー
元国連人種差別撤廃委員会議長
EU基本権庁チェアパーソン
IMADR理事