寄稿者の方がたから、コロナ禍における外国人の医療アクセスに関して貴重なご報告をいただいた。
この問題を、国連人権条約機関はどのように捉えているのか。昨年、2021年12月10日の人権デーに際して発表された声明を紹介する。
『緊急に包括的・包摂的・普遍的なCOVID-19人権施策が求められる』 人権デーにあたっての国連人権条約機関による声明
人権デーにあたり、国連人権条約諸機関は、COVID-19のパンデミックが全ての人に与える比類なき社会経済的・健康的影響への対応だけでなく、過去2年間にわたって世界中で起きた深刻な人権侵害に対応するため、インクルーシブで包括的、普遍的な政策を直ちに採用するよう、各国に呼びかける。
COVID-19の発生以降、国連人権条約諸機関はこのパンデミックが、人びとの心身の健康、労働、暮らしに及ぼしている前例のない長期的な影響を注視してきた。強制的なロックダウン、国境の閉鎖、検疫、フィジカルディスタンシングなどの措置の法令が、差別をエスカレートさせ、暴力を激化させるとともに、人びとの日常的な社会的交流、移動の自由の権利を制限していることを把握している。
この非常に困難な状況において、個人および集団の人権の行使と享有は決定的に損なわれている。このパンデミックは、不平等や不公正、適切な医療サービス、しかるべき生活条件、そしてその他の基本的人権へのアクセスのない個人やコミュニティが従来から抱えていた脆弱性に拍車をかけた。これらの課題に対して、より強力で包括的、普遍的な施策をもって立ち向かうことが急務である。
住民に直接的・間接的に影響するパンデミックへの各国の対応は多様で多層的である。しかしながら持続可能な解決は、人権を重視したアプローチと平等・非差別(non-discrimination)・包括性に基づいた新たなパラダイム、そして国連の中核的な人権諸条約を尊重した国際的な協調と協力なしには達成されない。これこそが、国境や社会的地位にまったく無関係のウイルスに対抗し、安全で公正、柔軟で適応力のある未来を築くための唯一の解決策なのだ。
昨今のCOVID-19の新たな変異株の流行は、連帯の欠如の結果であり、国家間の不平等なワクチンの分配に対応する必要性を示している。国連人権条約諸機関は、COVID-19ワクチンを世界全体の公共財だと捉えている。これは各国が、ワクチンの共有・公衆衛生主導のワクチンの認可・技術移転の協定について、具体的な措置をとるべきである、ということを意味する。また、各国は任意・無償のライセンス(Voluntary licensing)、技術の共有(Technology pools)、TRIPS協定(貿易に関する知的財産権の保護協定)の柔軟性の利用や、特定の知的財産権の条項の撤回などについても想定しなければならない。
各国はまた、たとえば、製薬会社の不適切な価格設定や商品流通の影響下で起こる人権侵害の責任を追及するといった形でCOVID-19の対応に民間のアクターを関与させる、より強力な戦略を打ち出す必要がある。民間企業には人権デュー・ディリジェンスの義務があり、各国はその義務に意義を持たせるため、より強固な国際法の枠組みを形作っていかなければならない。
加えて、国連人権条約諸機関は、これらの前例のない困難を契機として、普遍性・包括性・負担の適正性・透明性の原理に基づく公的な医療制度を構築することを各国に求める。このパンデミックは、すべての人がいかなる差別も受けることがなくアクセス可能で、利用可能かつ負担が適正な開かれた医療保健施設とサービスがなくては、身体的・精神的な健康の権利が保障されないことを示している。同時に、各国はCOVID-19のパンデミックへの対応が、他の医療保健施設、特にメンタルヘルス、また性と生殖に関するケアへのアクセスを妨げるものにならないよう保証しなければいけない。
国連人権条約諸機関は各国に、復興計画の策定、世界的な問題やCOVID-19に対応する際に、多数の国が関与する形で、変革的・包括的な人権に基づく施策を採用するよう呼びかける。普遍的な人権へのコミットメントを深め、包括的なガバナンス、平等、社会正義を促進することで、各国はCOVID-19の危機から根本的に脱却することができるはずである。
(翻訳:IMADR事務局)