人種差別撤廃委員会の日本審査 間近かに

小森 恵
IMADR事務局長代行

2014年8月の前回審査からちょうど4年経つ2018年8月16・17日、国連人種差別撤廃委員会(CERD)による日本政府第10・11回報告書の審査が行われる。1995年に日本が加入してから、これで4度目の審査になる。IMADRは今回の審査においても、これまでと同様に、市民社会から参加する団体・個人のコーディネーター役を務める。
日本政府の第10・11回報告書は昨年すでに提出されている。本来、前回審査の勧告を受けて、それらをどのように実施したのかをこの報告書で報告しなくてはならない。その目的を果たしているとはいえない政府報告の内容に関して、人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット、事務局IMADR)は2017年12月に関係省庁との意見交換会をもった。委員会に提出するNGOレポート作成のため、政府担当者に直接質問を行い、情報をえるための意見交換会であった。
また、その一カ月前の昨年11月には、日本の第3回UPR(普遍的定期審査)が行われ、人種差別撤廃に関連する勧告が多数出た。さらにその一カ月前の10月には、2019年予定の市民的および政治的権利に関する国際規約の日本審査での質問項目が、自由権規約委員会により発表された。これらプロセスにもERDネットおよびIMADRは市民社会として参加をし、マイノリティの権利および人種差別に関する問題について提言活動を行った。その結果、両者ともに今現場で起きている人種差別の課題を的確に反映した勧告および質問内容になった。

 

日本審査でとりあげられる課題
人種差別撤廃委員会が8月審査でとりあげる質問は次の3つのパートに分かれている。
パート1)条約実施に必要な法整備
憲法における人種差別に関する定義
人種差別を禁止する包括的法律の制定
パリ原則にしたがった国内人権機関の設置
条約第4条 (a)(b)の留保撤回(憎悪や差別扇動の処罰規定)
メディアおよびネット上のヘイト・スピーチをなくすための措置
公人によるヘイト・スピーチや憎悪扇動への制裁
「ヘイト・スピーチ解消法」がもたらした影響
パート2)マイノリティ先住民族への人種差別
アイヌ民族および琉球・沖縄の人びとの権利
部落民の定義と「部落差別解消推進法」の実施
移住女性に対する暴力
「慰安婦」問題の解決に向けた取り組み
ムスリムに対する人種プロファイリングの防止
パート3)移住者や難民への人種差別
移住者への人種差別に対する措置
技能実習制度改革のための措置の実施
外国籍者の公務員任用、国民年金
朝鮮学校に通う子どもたちの教育の権利
人身取引に関する法律制定に向けた動き
難民に対する非差別意識の促進

 

これらはどれも待ったなしの課題である。特に、2016年に施行された「ヘイト・スピーチ解消法」が、日本の人種差別の問題にどのような影響をもたらしているのか、絶え間ない政治家による差別や偏見をあおる言動とお咎めなしの姿勢は、この法律制定の実施にどう影響を及ぼし、どのような政治メッセージを社会に発信しているのか。「部落差別解消推進法」は、条約第一条の世系解釈に関する政府の見解を変えるような動きを作れるのか、、、。
8月の審査がこれら山積する問題に一つでも多く解決の糸口をもたらすものになってほしい。また、それを目指して努力をすることが私たち市民社会にも課せられている。