持続可能な開発目標(SDGs)と日本国内の人権課題

金昌浩(きむちゃんほ)

弁護士・認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ研究員

 

はじめに

2015年9月に国連総会で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、その中には「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げられている。

SDGsは、2000年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」を基にしているが、MDGsとSDGsの違いとして「普遍性(Universality)」が挙げられる。すなわち、MDGSは、専ら途上国の課題に注目していたのに対し、SDGsは先進国に対しても適用される。

 

SDGsと「人権」

 SDGsに「人権」という用語が明記されているのは、実は、目標4.7の人権教育に関する部分のみである。

しかし、SDGsの中の貧困、保健、教育といった目標は社会権に、目標16の司法アクセスや情報への アクセスなどは自由権に、それぞれ対応するものであり、目標5のジェンダー平等や目標10、16の不平等の是正などは、女性差別撤廃条約や人種差別撤廃条約、障害者権利条約に深く関わっている。

また、SDGs自体ではないが、「2030アジェンダ」は、複数箇所で人権に言及している。例えば、パラグラフ10では、新アジェンダは、「世界人権宣言、国際人権諸条約…にも基礎を置く」ことが明記され、パラグラフ19では、「世界人権宣言及びその他の人権に関する国際文書並びに国際法の重要性を確認」し、すべての国が「すべての人の人権と基本的な自由の尊重、保護及び促進責任を有すること」が強調されている。

国連人権高等弁務官事務所やEU諸国の国内人権機関は、SDGsを人権の観点から分析し、SDGsの各目標と国際人権条約の条文の対照表を作るなどの作業を進めている。

 

SDGsと日本国内の人権課題

 以上をまとめると、SDGsを実施するにあたっては、「普遍性」の原則に照らし、日本国内での人権課題の解決についても目を向ける必要があり、国際人権法が遵守されなければならない。

SDGsの日本国内での実施に最も関連する国際人権法の規範は、日本が批准している国際人権諸条約及び同条約の実施機関である各条約機関が日本政府に出した勧告である。

したがって、SDGsの国内実施にあたっては、人権条約機関の勧告の内容に沿った実施手段が求められる。例えば、目標16.bにおいては、「非差別的な法規及び政策を推進し実施する」ものとされているが、この目標を実現するためには、人権条約機関からの度重なる勧告を踏まえ、包括的な差別禁止法の制定が必要になる。

 

国内の人権問題に取り組む市民もSDGsを使おう

 日本政府もSDGs実施指針の策定を進めており、2016年5月にはSDGs推進本部を設置、9月には実施指針の策定に向けた円卓会議を開催している。

しかし、円卓会議の資料として政府が作成したSDGs実施指針のたたき台及びその具体的施策案は、既存の政策の寄せ集めに過ぎず、国際人権法の要請はまったく考慮されていない(「人権」という用語は一言も使用されていない!)。

日本国内の人権課題の解決に取り組んできた市民の間でSDGsへの認知度は低い。今後SDGsの実施に対する国内外の関心が高まるのは確実であり、SDGsは人権課題を解決するためのツールとなりうる。今後は、人権問題に取り組む市民も、政府のSDGs実施指針に人権の視点が反映されるようモニタリングしていくことが重要になる。

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