ネパール地震から1年余り──被災者支援 何ができて、何が残されたのか

小森 恵(こもりめぐみ)

ダリット部落プロジェクトコーディネータ

 

2015年4月25日と5月12日にネパールで起きた二つの地震は、死者8,969人(女性4,956人、男性4,009人)、行方不明4人、負傷者22,309人という大きな被害をもたらした。50万戸が全壊し、86万人が行き場を失った。現在も多数の女性と子どもたちが精神的外傷を受け、サポートを必要としている(国連の調査)。世界199カ国中28番目に災害リスクの高い国で地震が起きたことにより、ネパールの脆弱性はさらに高まった。中でもダリットの女性と子どもたちは深刻な被害をうけ、特別なサポートを必要とした。IMADRを含む日本、世界からの支援を力に、IMADRのパートナー団体であるFEDO(ネパール、フェミニスト・ダリット協会)はダリットや先住民族の被災者の救援・復興の支援を行なった。その概要と残された課題についてFEDOの情報を基に報告する。

 

1.緊急救援物資の配布

FEDOは地震発生直後から被災者救援に取り組んだ。8つの郡(カトマンドゥ、ラピトゥール、バクタプール、カヴレ、ラメチャップ、ダディン、シンドゥルパルチョーク、ヌワコ)にある被災の激しかった村に行き、地元のFEDO支部と協力しながら、米、豆、塩、食用油、麺、乾パン、医薬品、水清浄剤、衛生品、生理用品、マットレス、テント、バケツ、シーツ、衣類などの救援物資を合計1,287世帯に届けた。現地では複数の被災者から、関係当局は救援物資の配給において相手によって異なる対応を行なっているという報告をうけた。

 

2.仮設避難所の建設

FEDOは150棟の仮設シェルターをカヴレ郡のコシデカ村に建てた。材料は竹とトタン板である。そこに約600人が住んでいる。

 

3.ダリット女性グループの所得創出活動

地震で最も深刻な被害を受けたのはダリット女性たちである。FEDOは6つの郡に12のダリット女性グループを作り、被災者として利用できる役所のサービスについて知らせた。また、精神的ショックから立ち直れるよう、心理カウンセリングを提供した。ダリット女性グループは定期的に会合をもつようになり、集めた会費で貯蓄を始めた。それを原資にグループで所得創出の活動ができる。FEDOはこれらグループに起業トレーニングを行ない、各グループに原資への協力として2万ルピーを提供した。

 

4.地方自治体、ステークホルダーおよび地域住民の間の交流プログラム

FEDOのダディン支部と シンドルパルチョーク支部は”被災者に公的サービスが平等に届くためのステークホルダーの役割”と題した意見交換会を開いた。ダディン郡の郡長は、新憲法にはダリットの権利の保障が組み込まれており、この条項が復興プログラムにおいても尊重されるよう監視していくと約束した。また、政府の再定住と復興のプログラムにおいては、周縁化された貧しい人びとが最優先されると述べた。そして、NGOに対して、これら政府の措置を今後も監視し続けるよう求めた。発言者のほぼ全員が、自治体の救援物資支給において差別があったと指摘した。交換会にはダリット女性やコミュニティの人びとも参加して積極的に意見を述べた。政府および自治体代表が最も厳しい状況にある被災者の声を直接聞く場となったこの会議は、今後の政府の復興のあり方に一石を投じた。

 

5.政府機関関係者への定期的なロビー活動

FEDOは他団体と協力して、内務省、国家復興局、郡災害救援委員会、郡庁、郡開発局、村落委員会(VDC)そして開発機関に対してロビー活動を行ない、ダリット女性と周縁化されたコミュニティの女性の問題に注意を喚起した。これまで政府の意思決定機関から除外されてきた女性たちは、復興局からも除外されている。FEDOは他の女性団体と共同で、政府の計画立案、意思決定、実施の各プロセスに女性が代表されるよう要請活動をした。その後、復興局は復興政策を見直し、女性とジェンダーに配慮したプログラムを加えた。

 

6.ドラカ地区で毛布を配布

FEDOはドラカのナムドゥ村の仮設シェルターの被災者に毛布60枚を提供した。特に、ダリット女性、子ども、高齢女性、シングル女性を優先させた。

 

7.公立学校に男女別トイレの設置

地震により大半の学校の校舎や設備は損傷をうけた。FEDOはトイレ建設に協力するため、聞き取り調査をしてニーズを把握した。それを基に、マイノリティコミュニティの子どもたちが多数通う3つの学校でトイレ建設を進める。

 

8.ジェンダーに配慮した災害管理に関する1日間の合同プログラム

復旧と復興に取り組む政府が被災女性の声に耳を傾け、女性の問題を政策に反映するよう、FEDOは他3つのNGOと協力して、”ジェンダーに配慮した災害管理”のための1日プログラムを政府関係者も招待して開催した。

14の被災地区からきた女性たちが震災について述べた。「私は家を失いました。家族は9人でしたが、地震直撃のあと、気がついたら4人は瓦礫の下で冷たくなっていました。周囲は廃墟となっていました。」とゴルカからの被災者クリシュナ・クマルは訴えた。最後に女性の課題に焦点を絞った15項目からなる”カトマンドゥ宣言2016”が採択された。

 

9 被災した若いダリット女性への職業訓練

FEDO はシンドゥルパルチョーク、マカワンプル、そしてカヴレの各郡の被災したダリット女性18人を招いて、1年間の縫製、裁断、仕立てのトレーニングを始めた。これによりダリット女性たちが生計手段を身につけ、収入に結びつけることができる。最初の6か月は座学を、残りの6か月で技術を習得する。

 

 

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ネパール地震救援支援カンパをしてくださった皆様へ

ネパール大地震被災者支援の呼びかけに対してカンパ金をお寄せくださり本当にありがとうございました。本紙183号で現地の状況と支援内容を報告して以降も貴重な支援をいただき、約1年間でFEDOを通じて総額約500万円の支援を行なうことができました。この場をおかりして厚く御礼申し上げます。

ネパール大地震救援カンパ

支援総額 ¥4,978,32120154月~20163月)

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