学校におけるジェンダー平等について考える!

小澤 利野(こざわとしの)

日本教職員組合中央執行委員

 

1995年の北京世界女性会議行動綱領には「教育は人権であり、平等・開発・平和という目的を達成するための最も重要な手段である。あらゆるレベルの教育者がジェンダーの視点を認識していなければ差別的傾向は強化される」と述べられています。

ジェンダーの視点が教育に位置づけられていなければ、差別は制度や慣習として温存され、根強く再生産されていくことになります。国際的には、あらゆる政策・施策・事業に「ジェンダー平等」の概念を取り入れることは、すでに当然の認識となっています。

2015年3月に東京都渋谷区で、「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が可決されました。同性パートナーシップを男女の結婚に相当する関係と認めたものです。この渋谷区のとりくみに呼応して、世田谷区、宝塚市、伊賀市、那覇市も続いて、同性パートナー証明書が認められました。衆参国会議員による超党派の「LGBT」注に関する課題を考える議員連盟も発足しています。

しかし、日本ではまだまだセクシュアルマイノリティの理解がなく、無知から生まれるセクシュアルマイノリティへの差別や偏見が存在しています。学校ではいじめにつながり、不登校になることもあります。成長にともない、社会の中で自分らしく生きられないために、引きこもりや自傷行為につながることもあります。このような状況の中、学校教育でセクシュアルマイノリティの子どもたちが、どのような経験をしているのか、どのような言動が存在しているか、そうした学校教育のありようを把握することが大切です。

文部科学省は、全国の学校における性同一性障害に係る対応状況を調査し、2014年6月、606件の報告を把握したとの結果を公表しました。また、2015年4月、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通知を出しました。ここでは性同一性障害の児童への支援だけでなく、「性的マイノリティとされる児童生徒全般」への支援、「学級・ホームルームにおいては、いかなる理由でもいじめや差別を許さない適切な生徒指導・人権教育等を推進」し、「日頃より児童生徒が相談しやすい環境を整えていくこと」の必要性が明記されています。

ただ、「性的マイノリティ」について学校の対応を示すなど一定の前進はありましたが、性的指向や性自認による差別を解消するための人権教育の視点等は不十分です。セクシュアルマイノリティが受ける差別や偏見、排斥の不合理性を追求していくことによって、性別についての固定的な観念や、それぞれの性にあてがわれた「らしさ」性指向を、無意識に求めようとする私たちの考え方自体を、批判的に問いかけていくきっかけとしていきたいものです。

性と生の多様性が尊ばれ、一人ひとりの「わたし」が大事にされるような場所として学校を構築していくためには、性別にかかわらず一人ひとりが安心して生活できる場として学校を改善していくことが必要です。集団生活を前提とする学校現場において様々な新しい課題への対応や、物理的な改善、制度の変更が求められることになります。しかし、何よりも大切なのは、教員や学校側の意識変化であることです。

ジェンダー平等な社会を実現するには、どこか1カ所に変更を加えればよいというわけではありません。この問題の解決のためには、私たちの日常生活から社会生活に至るあらゆる分野の変革が必要です。もちろん一挙に変革できるわけではありません。だからこそ、私たちにできるところからジェンダー平等への動きを着実に作り出すことが必要なのです。