移住女性を取り巻く問題とCEDAW日本審査

村西 優季(むらにしゆうき)

移住者と連帯する全国ネットワーク、NGO神戸外国人救援ネット

 

移住連は外国人とマイノリティの支援に特化する約80の団体が集まったネットワーク組織である。今回の女性差別撤廃委員会日本審査に移住連からは筆者と、自身も日本で暮らす移住者であり、また移住女性支援にも携わっているレニー・トレンティーノが参加した。

 

ここ数年でグローバル化は急速に進み、海外に行く日本人、日本を訪れる外国人が増加するなか、移住女性を取り巻く環境は決して良くなってきているとは言えない。我々は今回、移住女性を取り巻く問題として5つの問題をあげた。DV、人身取引、教育、就労、難民・庇護希望者の問題である。

 

移住女性がターゲットとなるDV被害が続いているにも関わらず、被害者女性に対する支援が極めて少ない。特に2012年施行の改定入管法では、「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6ヶ月以上行なわないで在留している」場合、在留資格取消しの対象となる(入管法第22条の4第1項第7号)としており、これはDVを助長し、被害状況から避難することさえも阻止している。

 

人身取引の被害を受けている移住女性がいる。その被害者はジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン(JFC)やその母親、技能実習生にまで及んでいる。父親に遺棄されたJFCとその母親が日本の労働者減を理由に援助を受け来日している。悪徳業者が生活の保証を約束し来日するも、架空の借金を背負わされ、性的・労働搾取を受ける。更なる被害を防ぐために、政府は現状調査を行なうべきである。また技能実習制度のもと、人権侵害、強制労働が行なわれている現状がある。制度の廃止と、労働者の人権が守られた新たな雇用の仕組みづくりを我々は求める。

 

日本語教育が必要なものに対する支援が十分に行われていない。また就労難から、貧困に陥る移住女性も多い。日本政府は、「女性」の社会での活躍促進を謳い、外国人家事労働者の受け入れを検討している。虐待、セクシャルハラスメント、搾取を防ぐためにも国際労働機関ILO189条約のような有効な判断基準が必要だと考える。そして難民の女性に対する性的暴力を防ぎ、健康を害する状況からいち早く救い出さなくてはならない。

 

今回の審査中、委員会は移住女性に関連する以下のような質問を日本政府に対し投げかけてくれた。――日本語教育・識字教育が必要なものへの支援が不足していること。失業率、不安定な労働環境、賃金格差、家事労働者受入れの欠点やILO189条約の批准について。難民女性への衣食住の確保。人身取引の被害者に対するシェルターや特別な支援の欠如や被害者が罰せられる事例について。

 

これらの質問に対して日本政府は、義務教育は国籍に関係なく全ての子どもに通う義務がある、大人に関しては文化庁が行うプログラムで支援を行なっていると回答。人身取引に関しては、入国の目的を入管が徹底的に管理し、偽装滞在を防ぐことで、労働搾取、人身取引を防ぐ。警察が関係機関と連携し、女性の状況に応じて在留を認める措置をとる、と回答。外国人家事労働者の問題に関しては、企業が労働者として雇用する場合は労働基準法に則る。しかし個人家庭に準ずる者は家事のみを行なうので、労働基準法適応外となる。ILO189条約に関しては国内の法律との関係があり難しいと回答した。いずれも現状の改善が見えるものではなかった。

 

短期間で22人の委員(林陽子委員長は日本選出のため対象外)の専門分野や関心にあわせて働きかけをするのは容易なことではなかった。しかし、興味を持ってもらえると、委員はとても熱心に話を聞いてくれた。渡航前に、委員にとって「NGOはパートナー」だと伺っていたが、まさにその通りであった。