委員会の勧告を無視する日本政府 部落女性の思いと大きく乖離―第7次第8次報告書審査に参加して

山﨑 鈴子(やまざきれいこ)

部落解放同盟中央本部女性運動部部長

 

女性差別撤廃委員会へのロビーイングは2003年、2009年そして2016年と3回目である。2003年の第4次第5次報告書審査へのロビーイングは日本におけるマイノリティ女性の課題が全く可視化されておらず、委員の方にとっても新しい課題として注目された。その結果アカー議長(トルコ)のまとめとして「非常に重要な問題として強調しておきたいのは先住民族を含むマイノリティ女性が被っている複合差別の問題である」と述べ、当時の坂東真理子男女共同参画局長も「二重・三重の差別を受けているマイノリティ女性への認識」として答えている。

 

2009年は「マイノリティ女性」という括りから、「委員会は、アイヌの人びと、同和地区の人々、在日コリアン、沖縄女性を含むマイノリティ女性の現状に関する包括的な調査を実施するよう締約国に求める」というようにさらに「マイノリティ女性」という括りから各グループ名を出しての勧告となった。

 

今回の審査にあたって、部落解放同盟中央女性運動部として、女性に対する暴力についてDVや人権相談に関わる人びとにマイノリティ女性についての研修を行なうこと、当事者の中から相談員を育成するための支援を行なうこと、マイノリティ女性への教育支援や就労支援、意思決定への参画など、事前にレポートを提出した。

 

2月15日のランチブリーフィングでは、部落女性の結婚差別の現状と部落出身であることを理由としたDV経験、日本には人権侵害があったときの救済機関がなく、部落差別の解決に向けた人権教育の取り組みが不十分であることを訴えた。また、女性差別撤廃委員会委員の方全員に部落差別は何を起因とした差別なのか、2002年3月の特別措置法失効後の部落女性の実態について、2009年大阪府連女性部の実態調査から、若年者の非正規雇用が34歳を境に急激に増大していること、高齢女性の非識字者の課題とともに、若年非識字者についての課題が明らかになったこと、就職・恋愛・結婚・日常の生活場面での被差別体験などグラフや表で示したリーフレットを配布し、ロビーイングを行なった。委員の方たちは、概ね好意的に私たちの話を聞いてくださった。16日の審査にあたって日本政府に対する質問も、マイノリティ女性一括りではなく、部落、在日コリアン、アイヌと、個別のグループをきちっと言っての質問であり、過去2回の審査から進んだ点である。

 

女性障害者・性的マイノリティについての質問も出され、当事者からの訴えが委員に反映されており、いかに直接訴えることが大切かを改めて思った。

 

しかし、日本政府の回答は、私たちの思いと大きく乖離したものであった。私たちが自ら実施した実態調査をもって委員に訴えたが、政府は「部落問題は日本独特の人権問題である。1969年から33年間特別対策を実施、過去6回の調査を実施、法律終了後同和地区の特定ができず、調査は行なえない」という回答であった。反面、このような回答をせざるを得ないぐらい委員の質問がだされたということでもある。

 

また、今回初めて、マイノリティ問題に関する特別報告者、女性差別に関する作業部会、人種差別に関する特別報告者それぞれのアシスタントの皆さんにIMADRジュネーブ事務所からアポイントをとっていただき会うことができた。直接訴える機会を得たことは、これからの運動にとっても有意義なものになると思う。IMADRジュネーブ事務所の役割の重要性を改めて知る機会になったのも貴重な経験であった。

 

日本政府報告書審査へのロビーイングは、事前の準備、審査前後の日本でのフォローなど多くの人たちに支えられて行なわれた。最後に私たちを支えて下さったすべての皆さんに感謝申し上げたい。

IMADR
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