スリランカで紛争の影響を受けた単身女性への生計支援プロジェクト

立正佼成会  一食平和基金の支援を受けて

活動の目的と背景

IMADRは立正佼成会の一食平和基金の助成を受け、2015年1月から10月まで「紛争の影響を受けた単身女性の生計支援」事業を実施した。活動実施主体は反差別国際運動アジア委員会(IMADR-AC)で事

業の主目的は、単身女性へのトレーニングや生計支援を通じて、スリランカのムラティブ県の軍事化と国内避難のなかで女性が直面する困難を乗り越え、女性たちのエンパワメントにつなげることである。

2014年から2015年のスリランカはマヒンダ・ラジャパクサ政権の最終局面にあたり、緊張した状況の中でIMADRにとっても、支援対象者にとっても政治的に困難な時期であった。さらに国際社会はスリランカに対して、2009年に終結した紛争の最終段階で起こったとされる戦争犯罪の説明責任に関する国際人権基準を尊重するよう強く迫ってきた。

スリランカの長く続いた武力紛争において女性は大きな負担を抱えてきたが、2009年以降、5万人以上の女性が「紛争によって夫を失った」とされ、また多数の女性が紛争末期に家族や親族を失い単身者になってしまった。2014年の統計によると、約23%の世帯で世帯主が単身女性となっていた。北東部では、紛争の結果20年以上女性がジェンダーに基づく暴力にさらされる事態が続いた。休戦後、アルコール消費の増加や北東部全体における軍の駐留の拡大により、ジェンダーに基づく暴力が増加していた。私たちの取り組みによって、啓発と結びついた生計支援という二つのニーズに対応して、女性たちが、政府担当者に対して、よりジェンダーに配慮した方法で水、住居や他のインフラストラクチャーを提供することを強化するよう働きかけることができるようにコミュニティ・グループをつくるための能力開発を行なってきた。

活動―国内避難民とアドボカシー

 ネドゥンケルニ地区はヴァヴニア県の北部県境にあり、オル・マドゥ、セナイピラヴ、パラセッティ、マドゥランピティとオディピディの5つの村で構成されている。セナイピラヴは紛争孤児が住む村として知られていて、IMADR-ACはそこでプロジェクトを始めるため、紛争によって夫を失った、あるいは影響を受けた単身女性36人を対象者として選出した。

養鶏支援:

25人の女性に対し、生存の可能性のより高い生後2ヶ月の鶏と2キロの餌を提供し、鶏を入れる小さな囲いを作った。女性にはそれぞれ10羽の鶏を支給した。

有機農法支援:

農業を試みた11人の女性に対して、落花生栽培や他の家庭農園の作物を拡大する支援をした。

畜産支援:

3人の女性に対して、乳牛を3〜4頭提供し、共同体の特に子どもたちが恩恵を受けるよう、この地域のための衛生的な牛乳やヨーグルトの生産を支援した。

保健教育と生計向上のためのトレーニング: 

 教育トレーニングプログラムの一環として支援対象に選ばれた、夫と死別した女性25人に対して養鶏に関するトレーニングを行ない、自分たちでつくったグラム(マメ科ササゲ属)を使って餌をつくることを教えた。同時に子どもの栄養や子どもの教育など、栄養の問題に関して教育および啓発を実施した。

活動により得られた成果・達成点

(1)エンパワメント―性暴力の予防および対処に関する理解、性と生殖に関する健康・権利の理解の向上

「性と生殖に関する健康と衛生」に関して1日のワークショップを開催し、地域の3つの村から女性100人が参加した。これにより、100人の女性が保健衛生について学び、私たちの関与により、助産師の定期訪問の支援があった。さらに、10人の女性リーダーのチームによるモニタリング組織が2016年に向けてつくられ、彼女たちは定期的に議論を行ない、あらゆるセクシュアル・ハラスメントの事件をモニターするようさらにトレーニングを受ける。

(2)組織能力構築―問題に対応し、解決する組織能力の向上

この事業は3人のカトリック修道女と5人の女性コミュニティ・リーダー(宗教はさまざま)によって実施された。北部の住民では、ヒンドゥー教徒とカトリック教徒が多数を占め、IMADR-ACプロジェクト実施チームは異宗教間アプローチをとり、コロンボの「母と娘のランカ(MDL)」の仏教徒女性がこの地域を訪問し、平和のための結びつきをつくることを促進した。リーダーたちは参加に先立ち、2014年から2015年にMDLの2つのリーダーシップ開発事業に参加した。カトリック修道女とこの地域の5人の女性は事業の実施をモニターする手続きをつくり、報告作成、支出の会計報告などに関する能力向上のために実地で学んでいる。

(3)貧困の削減

プロジェクトの開始時には支援対象者にはきちんとした収入はなく、他の農場で雇われるか、他の地域で移住労働者として働き、極貧状態にいる人もいた。しかし、この事業のプロセスで一定の収入を得る支援を受け、そのことで村レベルでのリボルビング・ローン基金、個人の貯蓄の拡大、朝食の販売、卵や野菜の販売など新たな収入を得る活動につなげ、貧困から抜け出す収入を生み出している。

(4)子どもたちの教育のための環境の改善

女性や一人親家庭への支援に加え、プロジェクトによる支援は子どもの教育のための環境改善にも及んだ。家族の収入が増えることにより、子どもたちは食事と教育へのアクセスを得ることができた。特に保健教育プログラムでは、子どもの栄養や学校教育に関する教育と啓発に焦点を当てた。

 

 

生計支援を受けた女性たちの声

サッティヤワニーさん(40歳)

私は最初の支援で落花生の種を頂き、約100kgを収穫し、50kgを売ることができました。たくさんの収穫があったので、支援される人が増えるようにこの事業に25kgの落花生を譲り、残りをこの農期での栽培に残しています。私には4人の子どもがいて、病気がちの子が手術を受けるのに、収穫による収入を2回の手術料20,000 ルピーの支払いの足しにすることができて本当に助かりました。

私は紛争中何度も避難し、家族と移住生活をする中、2001年に夫を失いました。長く続いた移住生活を終え、2012年に村に戻ることができ、女性農業者として再び自分の生活を始めています。今回受けた支援に感謝しています。

 

ヴイェクマリさん(43歳)

私はこの事業から鶏10羽を頂き、卵を1個15ルピーで15個売ることで収入を得ることができました。家族でも食べています。この他に家庭農園についても支援を受けて、家族で食べる他、小売業者に売るために、鶏のふんで農作物の栽培をしたり有機肥料を作っています。紛争中は家族と避難生活を余儀なくされ、2010年に村に戻りました。避難生活中は十分でなかった子どもたちの食生活の改善ができて本当に有難いと思っています。