ネパール大地震、生命と財産に起きた惨事―私たちはどう立ち向かうのか

IMADRのネパール大地震被災者緊急支援の呼びかけに対して多くの方々から寄付をいただきました。皆様からの寄付はすべてFEDOを通してダリットや先住民族の被災者の救援と復興に役立てさせていただいています。被災地はどうだったのか、今後どうなるのか?去る6月初旬のIMADR理事会と合同総会のため来日したFEDO代表のドゥルガ・ソブさんから、被災地の状況や復興について報告していただきました。6月4日に大阪で開かれたネパール地震緊急報告会(ヒューライツ大阪とIMADR-JCの共催)でのドゥルガさんの話の概要を以下の通り報告します。

 

ネパール大地震、生命と財産に起きた惨事―私たちはどう立ち向かうのか

ドゥルガ・ソブ

フェミニストダリット協会(FEDO)代表、IMADR理事

 

ナマステ!ドゥルガ・ソブです。今日はお招きいただきありがとうございます。日本の皆さんは地震の恐ろしさをご存知だと思います。ネパールではこれまで80年間、大きな地震はありませんでした。余震も含め今回の地震で8,669人が亡くなり、22,000人近くが負傷しました。3,000世帯が家を失い、歴史的建造物が大打撃を受けました。政府、国際機関、NGOの多数が出動し、死者や負傷者の救出や救援物資の配給にあたりました。

深刻な被害

FEDOも地震直後に被災地に出かけて救援物資を届け、被災者から実情を聞きました。主に山間部や遠隔地にある被災地に行きましたが、どこも被害は深刻でした。ダリットの地区の人たちが受けた被害は他の地区とは比べものにならないくらいにひどく、救援のヘリが着陸できるような平地もありません。行った先々で初めて救援物資が届いたという感謝の声を聞きました。

カトマンドゥの被災者と山間部の被災者とは被害の状況は違いますが、地震によって誰もが心に傷を負いました。いつまた地震が来るのか…そんなことを考えながら生活しています。私自身、日本に来て、こうして皆さんにお伝えすることで、少し気持ちが和らぎます。特に高齢者は不安がいっぱいで、家の中で寝たくないという人がたくさんいます。83歳になる私の母もそう言います。子どもたちも恐怖や不安を感じています。心のケアが必要です。都市部では子どもを対象に遊びやお絵かきを通して気持ちを表現するのを助ける活動がありますが、農村部、とくにダリットの子どもたちにはそうした機会がありません。

8,669人の命が奪われました。性別では女性が4,771人、男性が3, 887人です。年齢別では10歳以下の子どもたちが目立ちます。農村では多くの男性が産油国などに移住労働者として出かけているため、家に残る女性や子どもに被害が集中したと思えます。農村地域、とりわけダリットが住む地区は道路も整備されていないため、救援チームが入っていない所がたくさんあります。行方不明者も多くいるので、死者の数はまだ増えると心配されます。

山間部・都市部のダリットは

特に被害が大きかったのは、震源地よりも北や東側の山間部です。地理的には中国の南側にあたります。これらの地域には先住民族やダリットが多く住んでいます。家もコンクリート造りではなく、土で作った家です。大きな揺れで土壁は崩れ、家の中にあった食料や生活道具はめちゃくちゃになりました。家屋倒壊で身分証明書もどこに行ったかわからない家族が多く、証明がないため政府の救援物資を受けとれない事態も発生しました。これから雨期に入りますが、地震で地盤が緩んでいるので、雨量によってはさらに被害が起きる可能性もあります。校舎もたくさん倒壊しました。都市部や地方の町では授業が再開され始めていますが、農村部では再開の目途もたっていません。

ダリットはもともと社会の周縁に追いやられてきました。今回の地震がもたらす被害でさらに周縁に追いやられるのではないかと危惧されます。とりわけ、ダリットの女性や子どもたちは脆弱な立場にあります。政府が発表している被害データは総合的なため、細かいデータの収集や実態調査を行なう必要があります。ダリットの人たちは地理的にも辺鄙なところに住んでいることが多いため、救援で置いてきぼりにされました。町に住むダリットの人たちも、さまざまな権限やサービスへのアクセスを等しくもっていないため、受けとれるはずの救援を受けることができませんでした。農村地域のダリットがもつ唯一の財産は住む家です。耕す土地がないため債務労働者として地主に依存している家族がたくさんいます。今はその住む家さえ失くしました。避難所や仮設住宅の提供においてもダリットが排除されたという情報が届いています。ダリットの子どもたちには児童労働者が多くいます。復興の中でこれら子どもたちへの配慮も必要です。ダリットの被災者については、短期的には飢え、栄養不良の進行、そして衛生環境の悪さによる伝染病の広がりが心配されます。

復興に向けて

FEDOは全国的な組織です。それぞれの地域で女性たちがグループを作り、草の根で活動しています。地方のFEDOグループからの情報をえて、支援が届いていないところに届けるようにしています。IMADRやその他日本の市民団体からたくさん支援をいただきました。それら支援金で食料、衣料、仮設テント、尊厳キット(女性が尊厳を保つために必要な物を入れたキット)、衛生キット、薬、水をきれいにする錠剤を用意して、被災地にもっていきました。農村ではもともと各戸にトイレがありませんが、今はさらにトイレに困っています。特に小さな子どものためにおまるを届けています。まだこうした救援物資が届いていない被災地があります。FEDOや他のNGOのネットワークから情報を得て、現地に出かけるようにしています。その際にこまめに情報収集をし、次の復興段階にどうしていくのか、計画作りに役立てたいと思っています。

これから復興に入っていきますが、それには再統合と再定住が含まれます。再定住には住む場所の確保が必要ですが、政府などの再定住計画に疑念をもっています。たとえ政府が土地を用意したとしても、そこにダリットが入れるのかが懸念されます。そのため、政府や国際援助機関に今後の復興においてダリットを排除しないよう働きかけをしていきます(P20参照)。また、ダリットの被災者に復興のために必要な情報や、安全を確保するために必要な情報を届けなくてはなりません。心に傷を負っている人に、どこに行けばカウンセリングが受けられるのかなどを知らせます(P20参照)。多数の妊婦も被災しました。どこに行けば子どもを安全に産むことができるのか、不安でいっぱいです。そうした情報を伝えるセンターを他の団体と協力して作ることを計画しています。

このためにも私たち自身の力をさらに高めていかなくてはなりません。そしてさまざまなネットワーク、連合体、NGO、国連機関、国際NGOとの連携と協力を強化して、ダリットそして周縁に追いやられた人びとに公正で平等な救援・復興が届くようにしていきます。皆様の引き続きのご支援をよろしくお願いします。

日本語翻訳・まとめ:小森恵(部落・ダリット差別プロジェクトコーディネーター)

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