スリランカでマイノリティ女性のエンパワーメント

ニマルカ・フェルナンド

IMADR理事長、アジア委員会代表

 

IMADRの基本的な活動の枠組みは、国連の人種差別撤廃条約に基づいています。そのためアジア委員会ではいくつかのチームを作り、この人種差別撤廃条約を実現させる活動を行っていますが、最も力を入れているのは複合差別、とりわけマイノリティ女性が直面している複合差別です。

 

皆様ご存知のように、スリランカは30年間の内戦が2009年にようやく終結しました。そして今年になって大統領選があり新しい大統領が生まれました。今は安定した平穏な状況にあります。これまでは内戦のもと厳しい状況に置かれていた女性たちのところに私たちはなかなか行くことができなかったのですが、こうした女性たちのところに自由に行くことができるようになりました。

 

内戦地域の女性たち、特に戦争で夫を亡くしたり、様々な人権侵害で失踪してしまって夫の行方が分からない女性たちに対して、今は軍隊に妨害されることなく、安心して生活手段を獲得するためのプログラムを行なっています(立正佼正会からの一食基金を得て実施)。そうした内戦地域の村を見れば女性の数が非常に多いのが現状です。女性たちがリーダーシップをとって自分たちの村の未来を築かなくてはならない状況にあります。そのような女性たちが自分たちの力で生きていく術を得られるように、私たちはプロジェクトを通じて活動の支援をしています。

 

戦争で女性たちは様々な暴力に直面し、常に色々なしわ寄せを受けてきました。これは世界のどこでも同じですが、とりわけ家父長制が敷かれている社会では、様々なしわ寄せや抑圧が女性に向けられます。私たちはこのような女性達が力を得ることによって今度はリーダーシップをとれるように、草の根で女性たちが自分たちのリーダーによる活動を築いていけるように、トレーニングを行います。また長い内戦で多くの女性たちがトラウマ、心の傷に苦しんでいます。こうしたトラウマを癒すための活動も行なっています。

 

また人権にも力を入れています。特に戦争中あるいは戦後に人権活動家等に対する弾圧で失踪し、未だに行方が分からない人がたくさんいます。そのため残された家族の養育や、きちんと警察や裁判所が捜査して明確にすることを求める運動が女性たちの間で続けられていて、その支援もしています。戦争で夫をなくした人が8000人、家族の行方を求めている人が1万5000人。このほとんどがマイノリティの女性たちです。私たちはこの女性たちの代表と一緒にジュネーブに行って国連の前で訴えたり、赤十字に行って解決を求めたりしています。

 

私はこれまで日本に招待され、皆様の前でスリランカの内戦のことや戦後の人権侵害のことを訴えてきました。IMADRの活動のおかげで国連で議論されるようになり、例えば戦争犯罪、人道に対する罪をスリランカ政府に問うような調査を行なうことも国連で決議されました。皆様方の支援があったからこそ実現したことです。

 

また女性たちが政治の力をつけ政治参加を果たしていくために、政治アカデミーというものを行なっています。女性たちが法律をつくるプロセスに関わっていくなかで、女性の権利がまもられ実現されていき、社会に影響を及ぼすことを目指しているのです。

 

さて、民主主義がスリランカで生きているということが今年の1月8日の大統領選挙で確認されました。私たちは逮捕や殺人等の脅しの危機にずっと直面していたわけですが、市民社会組織はそれにはめげませんでした。めげずに闘うことによって、ようやく軍事的な政権を倒すことができました。

 

私たちは、日本が戦後急速な復興を遂げたことを存じています。今スリランカも同じ様な状況にあります。私たちは戦争からの復興を遂げたい、平和な社会をつくりたいと願っています。人権問題、戦争責任等問題は多くあります。日本政府にも今日お集りの皆様にも、復興に向けたこれからの活動に引き続き支援と連帯をよろしくお願いします。