『新・先住民族の「近代史」: 植民地主義と新自由主義の起源を問う』

上村英明著

法律文化社発行、定価:2,700円+税 2015年1月

武者小路公秀(むしゃこうじきんひで)

IMADR-JC理事長

 

本書は、歴史について我々が日本中心に考えることしかできないでいる今日、全く別の視点を与えてくれる本です。日本が、「従軍慰安婦」や南京大虐殺事件を引き起こした「近代史」、これを強引に否定して、実は日本がそんな悪いことはしていないという「近代史」、そういう日本中心の近代史論争を超えて、「先住民族」の立場から本当の「近代史」を見る目を養いましょう。米合衆国も国連も北米先住民族、「イロクォイ連邦」のマネをすることで生まれたこと、日中両国がその「所有権」を争っている尖閣列島は、琉球先住民族=糸満漁民の遠洋漁業の漁場であること、核実験場やウラン鉱山で、核の最大の被害者は先住民族だということなど、「近代」の意外な面白さと厳しさを学ぶことで「日本中心近代史」を卒業したいものです。

「先住民族」の目を通して「近代史」を読むことは、「植民地主義」という今日日本国憲法が明確に反対している日本近代史の一番大事な問題を理解するために必要不可欠です。日本国憲法前文の中で、世界諸国民が「恐怖と欠乏を免れて平和に生存する権利」を私たち日本人民がみとめていることを明記しています。この「平和的生存権」は、しばしば「平和主義」として強調されていますが、憲法前文をよく読めば、それは日本帝国が周辺諸国の植民地侵略をすることで、平和に生存していた諸国民の生存する権利を侵したことの反省を表現したものです。世界諸国の憲法の中で植民地侵略が犯罪であることを明確にした「反植民地主義」憲法だと思います。それを今安倍政権は無視して安保法案で強引に日本が再び植民地侵略に参加する道を開こうとしているのです。

その意味から、本書は大変時宜をえた必読の書です。本書はもともと先住民族の運動に直接連動する目的で刊行されたものを大幅に組み替え、また書き足した補足もあって、今日の世界史の根幹になっている「植民地主義」と「新自由主義」の真の姿を浮きぼりにしています。第一部:先住民族への差別と収奪の歴史、第二部:「国民国家」形成という名の植民地化、第三部:グローバルな環境問題史と先住民族、からなりたっています。先にあげたような意外な例をとりあげることで、本書は「近代」を動かしている先住民族の生き様とその知恵について読者を知らず知らずのうちに認識させてくれます。本書を読んで、反植民地主義の立場にしっかり立つ平和な日本を、アイヌ・琉球の日本列島の両先住民族と協力してつくることを提案したいと思います。

 

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