反差別国際運動の挑戦

ニマルカ・フェルナンド

IMADR理事長

 

IMADRは、本当に長い歴史的な人びとの数々の闘い、そして部落解放の闘いの結果生まれました。

IMADRの目的は、世界中で差別をされている人びと、抑圧されている人びとが差別を克服して、公正な社会をめざすということです。その希望を掲げてIMADRの運動が発足しました。

私たちIMADR、IMADR-JCと部落解放同盟は、パートナー団体や会員と協力しながら、過去27年間、差別をなくすために世界の闘いのまっただ中で活動をしてきました。マイノリティの運動を通して、人の温かさを世界に実現させるために活動をしてきました。

私たちは部落の人びとの生活というものを共有することでともに経験してきましたし、ともに泣き、ともに笑ってきました。また、インド、ネパールそして南アジアに広がるダリッド差別のもとで闘っているダリッドの人びととともに暮らし、ともに闘ってきました。

私は内戦のもとで暴力と人権侵害にさらされてきたスリランカから、IMADRの理事長として皆様とともに活動してきましたが、このIMADRの活動が私に力をくれました。

皆様からの支援と協力は、スリランカのタミール地方にいる少数民族のタミールの人びとの闘いにも大きな力を与えてきました。また毎年、ヨーロッパのロマの人びとの残虐な歴史を振り返った集会をともにして、皆様は思い出してくださいました。またここからは大変遠いですけれども、ラテンアメリカのマプーチェの先住民族の人びとの闘いにも協力し、支援の手を差し伸べてくださいました。世界の不可触のもと、差別を受け、権利を奪われてきた人びとの権利実現のために、今日あらためて皆様と誓い合うことができてうれしく思います。

私たちは常にさまざまな財政的な挑戦というものを受けています。財務の報告をみたときに、私たちは自分たちの活動がいったいどのような結果をもたらしてきたのだろうと自問します。その結果の一つは、前国連人権高等弁務官が言われた言葉に表れています。すなわち、「私たちは皆協力してカーストの厚い壁を破ろう」との呼びかけです。

カースト、職業と世系にもとづく差別を国連レベル、世界レベルでの人権の闘いの中にもってくるのに15年かかりました。こうしたところに私たちの活動の結果があらわれているのだと思っています。

ここにいらっしゃる部落解放同盟のリーダーの方々、ネパールからきたIMADRの理事ドゥルガ・ソブ、インドからきた理事ブルナド・ファティマ、そしていま通訳をしているIMADRの小森恵、ジュネーブ事務所のスタッフなどが多くの人びととともに協力しながら、非常に長い年月をかけて、ようやく一定の成果を見るところまでこれたと思っています。解放運動のリーダーの方々、南アジアの代表の方々にぜひ拍手を送りたいと思います。そして国連人権高等弁務官と厳密な関係を持ちながら、この大きな課題にこれからも邁進していきたいと思います。

国連では、住居について、教育について、あるいは安全な水に関して、あるいは差別に関して、様々な報告書が専門家によって出されていますが、そのとき常に「職業と世系に基づく差別」というこの言葉が引用されています。それは私たちが闘ってきた成果を示していると思います。

人種主義との闘いの勝利、あるいは成果を私たちは非常に喜ぶべきですが、その一方でますます人種主義、右翼、右傾化する社会という現実に驚かざるを得ません。世界の非常に深い部分また大きな部分に、宗教的な極端者あるいはナショナリスト、あるいはレイシストの力がまだまだ存在しています。

いまの世界のリーダーたちは、いかに経済的な成長を遂げたかということを大きな目的または誇りとしています。また様々な先進技術を使って世界をリードしようとしています。世界の中での経済欲、技術推進といったものが、ますますレイシズムや人権侵害を広げる手段に使われ、広がる結果となっています。そういう世界にいま私たちがいるということを認識しなければなりません。

そうした先端技術あるいは莫大に得たお金は、平和な地での共存というものに全く使われていません。これは昨日、私たちの理事の一人から報告されたことでもありますが、数えきれないほどの人数の移住者や難民がアフリカ大陸からヨーロッパに逃げる過程で、地中海でおぼれ死んだり事故で遭難しているという事実を聞きます。かつては文明をつなぐ海と言われていた地中海が、今はまさに移住者の人たちが命を落とす海になっている、という報告です。

今、グローバルに人種主義という言葉が広がっています。そしてIMADRは非常に大きな挑戦を受けています。日本の皆様は、IMADRの誕生というたいへん重要な出来事にきっかけを与えてくれましたし、皆様が連帯を国際社会に届けてくださいました。民主主義を愛するここにお集りの皆様、日本の皆様、ぜひ私たちはもう一度力を結集して闘いを続けていきましょう、と呼びかけたいと思います。

私たちの問題は時には解決されることもあります。ところが、解決されてもまた新しい形で問題が立ち上がります。ジェンダーに基づく差別、あるいは女性の権利、人権、これらはまだまだ私たちの大きな課題です。

私たちのエネルギーを結集して、差別をなくし人権を確立する活動を押し進めていきましょう。世界は、皆様と私たちの連帯、力の強化というものを必要としています。お互いを高めあいながら、この旅を続けていきましょう。