在日ブラジル人労働者とその子どもの教育を巡る状況

上運天ミゲルヨシオ(かみうんてんみげるよしお)
ブラジリア・カトリック大学教員

 私の祖父母は沖縄から南米に移住し、私はブラジルで生まれた。1989年に来日し、現在は東京で教師をし、在外ブラジル人代表者会議(CRBE)の事務局を務めている。
在日ブラジル人について
ブラジル人は、1990年代以降に来日した外国人の大半を占めており、地域の労働力不足を補ってきた。しかしその従事分野は、日本で3K労働(きつい、汚い、危険)と見なされる製造・介護・土木業が中心であった。以来約25年が経過し、多くの家庭が、そして、多くのブラジル人がこの地で生まれた。会社を立ち上げた者もいる。こうして、日本とブラジル人の間には強い絆が生まれたが、四半世紀が経った今なお在日ブラジル人は「一時的な滞在者」と位置づけられている。いま求められているのは、一時的な滞在者ではなく外国人住民として認識されること、そして、「地元にある外国人コミュニティ」の一つではなく日本の地域社会を構成する一要素として理解されることである。
 2008年のリーマン・ショック時、在日ブラジル人の人口は約32万人であった。この世界的な金融危機により、在日外国人労働者、特に、工場で働く派遣労働者の就労条件がいかに不利なものであるか明らかになった。彼(女)らは、その大半が半年未満の短期契約であるなど、不安定な契約で就労しており、健康保険や厚生年金保険にも未加入である。またブラジル国籍の労働者の約6割が派遣・請負の労働者であり、不安定な就労形態の者が多い。こうした就労不安定性は社会的地位が底辺に近づけば近づくほど増大する。外国人労働者は不要になれば切り捨て可能な安価な期間労働者であるといえよう。
 在日ブラジル人は2008年以降の7年間で大幅に人口が減少し、現在は約17万人と国別で四番目である。このうち半数以上が永住ビザを所持している。平均年齢は35歳前後と年齢構成は若い。なお、外国人労働者を巡っては、近年さまざまな問題が生じている。具体的には、労働者を保護する法令・制度の未整備、人権保障・社会統合政策の欠如などが挙げられる。すなわち、長期ビジョンが不十分な状況が明白になってきている。
在日外国人児童の学校教育について
日本の義務教育については、在日外国人児童も対象にする必要がある。完全な社会参加のためには、日本人と同条件下での学校教育が保障されるべきである。そうした配慮が不足すると、日本の学校への入学が困難になったり、入学したものの順応できないということが起きてしまう。また、義務教育修了後の進学支援が不足している地域も見られる。在日外国人児童は一般的に日本と母国という二つの社会の狭間で生きており、それと同時に、どちらにも属していない。日本語の知識を深めることもなく、またポルトガル語を勉強しない場合にはブラジルとの繋がりも失っていく。
 2001年に外国人集住都市会議が設立されたことは、有意義な出来事である。設立以来、外国人住民に関する問題についてより広範な議論が行われ、政府や世論、メディアも外国人の定住化をより重視するようになってきた。これらの活動は重要である一方、目前に山積する課題に対して、いまだ僅少な効果しか生み出していない。私は、日本政府に必要なことは、外国人労働者に対する見方を早急に変えることであると考えている。
共存を目指して
近年、日本でヘイト・スピーチが増加しているのは衝撃的な問題である。アパルトヘイトを日本に奨励する曽野綾子さんのコラムを断固拒絶する。人種隔離ではなく、共存を目指そう!何よりもまず、外国人差別をなくす法整備がなされるべきではないだろうか。
 私たちがここ日本にいるのは隔てられるためでは決してなく、社会がより公平なものとなるよう貢献するため、この社会に加わるためであるということ、そして、効果的な社会統合政策は、外国人労働者のみならず日本社会全体に恩恵を与えるということ。私は私のこの思いを伝えていきたい。差別のない社会での生活を願って。