朝鮮大学校 学生
2010年4月、日本政府は、すべての高校レベルにある子どもたちが家庭の経済状況に関わりなく安心して学べるようにと、日本の公立学校、私立学校、そして各種学校である外国人学校に通う生徒たちにも就学支援金を支給するという画期的な「高校無償化」制度を施行した。
しかし日本政府は、朝鮮学校の子どもたちとはなんの関係もない、日本と朝鮮民主主義人民共和国との拉致問題に進展がないことなどの外交上の問題を理由に、各種学校である外国人学校のうち朝鮮学校のみを「高校無償化」制度から除外した。
当時中学卒業を控えていた私は、この理不尽且つ露骨な差別に大変ショックを受けた。高校に進学した私は「高校無償化」制度の適用を受けられず、本来であれば勉学や部活動に励み、自身の将来のことを考え友達と楽しく過ごすはずの高校三年間、そして大学生になってからも、「高校無償化」制度を朝鮮学校にも適用するよう求める署名活動や要請活動を行なってきた。しかし、大学3年生となった現在も、朝鮮学校には「高校無償化」制度は適用されていない。
なぜ、同じ高校生なのに日本の高校生や他の外国人学校に通う高校生たちには適用され、朝鮮学校の高校生だけが除外されなければならないのか。
日本で生まれ日本で育つ私にとって、朝鮮学校は同じルーツを持つ友人たちと民族の言葉や歴史を学び、朝鮮人としてのアイデンティティを育む大切な場所である。
朝鮮学校で学ぶ在日朝鮮人の子どもたちも日本人や他の外国人の子どもたちと同じように学習権を有している。朝鮮学校への差別は決して許されてはならないと思う。
「高校無償化」問題が浮き彫りになった直後から、差別の被害者である朝鮮学校の生徒たちだけでなく、保護者や在日同胞たちは、朝鮮学校への制度適用を求めて様々な活動を展開してきた。私たち朝鮮大学校の学生たちは、朝鮮学校のみが「高校無償化」から完全に除外された年である2013年5月以降、金曜日ごとに、文部科学省前で「高校無償化」の即時適用と教育権の平等の保障を求めて抗議行動を続けている。雨の日も風の日も寒い日にも続けられてきたこの行動はいつしか「金曜闘争」と呼ばれるようになった。数十人規模からはじめられたこの活動も回を重ねるごとに参加者が増えてゆき、朝鮮学校の保護者や東京・神奈川の朝鮮高校生、そして日本の市民団体の方々もこの活動に参加し、1000人を超える規模で行なわれる日もある。また、運動の輪は、今や日本の人たちや韓国の人たちにも広がっているところである。
また、この間、朝鮮大学校の学生をはじめとする朝鮮学校関係者は、日本が締約国となっている国際人権諸条約の実施状況を審査する各委員会に朝鮮学校の子どもたちに対する差別について報告するなどの働きかけを行なってきた。その結果、国際社会においても、2013年に社会権規約委員会が「高校無償化からの朝鮮学校除外は差別である」と明確に指摘し、昨年には人種差別撤廃委員会もこの問題は朝鮮学校の子どもたちの教育権を妨げるものであると指摘しながら、日本政府に対し特に注意をもって具体的措置を講じるよう求めている。
現在、この問題は差別を受けた朝鮮高校の卒業生や在校生らが原告となって国を相手に提訴するなどして、裁判闘争に突入している。大阪・愛知・広島・福岡・東京の5地域で行われている絶対に負けられない「高校無償化」裁判の勝利にむけて、私はこれからも差別に負けることなく、教育の平等の権利を求めて朝鮮学校に高校無償化制度が適用されるその日まで抗議の声をあげ続けていく決意である。