髙橋宗瑠(たかはし そうる)
ビジネス・人権資料センター日本代表
今世界では事業のすべてに渡って人権の尊重が必要とされており、各国のNGO、消費者、そして投資家までもが厳しい眼差しで企業を評価するようになっています。特に東京でのオリンピックの開催が近づくにつれて、日本企業の行動には、今まで以上に注目が集まることが必至です。国外での行動はもとより、国内でも「karoshi」は国際的に認識されており、妊娠した女性に対するマタハラ問題や外国人技能研修生の扱いも日本の国際的評判を落とす一因になっていると言っても過言ではありません。
ビジネス・人権資料センターは2002年にイギリスで設立された国際人権NGOで、現在はロンドン本部以外に、世界12ヶ国に現地代表をおいています。ビジネスと人権にまつわる問題を調査して声明文を出したり報告書を発行するNGOが数多くある中で、当団体の活動内容は少し違っています。ビジネスと人権に関するあらゆる情報を蓄積するというのが当団体の活動で、他のNGOが報告書などを発表した時にそのリンク(ウェブサイト掲載アドレス)を当団体のウェブサイトに掲載し、場合によっては全世界で15000人以上に送っている週刊アップデートでハイライトし、世界に向けた発信の手助けをします。また、特定の企業に関する報告があった場合は、中立的な立場でその企業に見解(回答)を求め、いただいた回答をそのまま最初の報告と並べてウェブサイトに掲載します。これまでに世界で2100件以上の案件に関して企業に回答を求め、70パーセント以上の高い比率で回答を得ています。その他ビジネスと人権に関連する政策レベルの情報も掲載し、企業や業界団体が人権方針を策定した場合にはそれも掲載しています。言ってしまえばビジネスと人権の図書館、今はやりの言葉で言えば「ワンストップセンター」という風に言ってもいいかもしれません。このような活動により、世界では当団体の中立性などが評価をされています。
私は2014年6月に初の日本代表に就任し、今まで数多くの企業の方と会って国際動向や海外の好事例を紹介したりしています。その中で感じることは、日本企業が「NGOの指摘」と聞くと、今でもすぐに防御的になったり、過度に警戒する場合があることです。しかし、NGOは決して「会社を潰そう」と考えているわけではありません。海外ではNGOを「厄介者」ではなく、人権がより守られる社会をいかに作れるかを一緒に考える対等なパートナとして認識する企業が増えています。日本でもそのような意識が高まり、NGOと意味のある、効果的な対話が普通のこととなることに貢献できればと考えています。また、日本企業の取り組みには評価に値する好事例もあるので、積極的な情報開示を勧めていきたいとも考えています。