ダリット女性に対する暴力の削減を目ざして

 ダリット女性にとって深刻な問題の一つである女性に対する暴力に関して、IMADRパートナー団体であるネパールのフェミニスト女性協会(FEDO)は国際レベルのアドボカシーから国内における地方当局へのロビー活動、そして女性を中心にした人権トレーニングや相談活動など、さまざまな取り組みを行なっている。
 浄土宗平和協会の支援をうけ、FEDOパルサ支部(ネパール中部)は4年前からダリット女性の健康の権利をテーマにしたプロジェクトに取り組んできた。そして今年度、パルサ支部はこのプロジェクトのもと、ダリット女性に対する暴力の削減を目ざした取り組みを行なっている。パルサ支部から届いた2014年度中間報告(4月〜9月)の一部をここにご紹介する。
報告:小森 恵

パルサ支部はスリシヤ村落開発委員会とビルガンジ町の行政地域におけるダリット女性の保健に関する問題で4年近く活動をしてきた。その一環として今年からドメスティック・バイオレンス(DV)削減を目指した複数の意識高揚プログラムを実施している。DV被害者の大半はそれが暴力であると気づいていないし、自分たちの権利についても認識していない。DVなどの問題解決が必要な場合はもっぱらパンチャヤット(村の長老会議)に委ねており、裁判所やDV法の存在やそれが使えることを知らない。このため、パルサ支部は女性たちがDVに関する知識や権利意識をもてるよう次のプログラムに取りくんでいる。

1.意識覚醒のための各戸訪問:ダリット地区での戸別訪問により262の家族がDVや女性に対する暴力について認識するようになった。関係機関の活用に関する情報についても配布された。
2.人権や法律に関するトレーニング:6月7・8日、ビルガンジで人権と法律に関するトレーニングを開催し、女性25人が参加した。関係行政機関、地区の保健所、警察署からも参加があった。
3.行政機関へのロビー活動:5月18日、DV法の内容と加害者への処罰について地区の警察官に知識を深めてもらうため、地区警察署を訪問した。役所にもロビー活動のために訪問をし、DV防止のために教育が重要であることを訴えた。
4.地域全体の交流プログラム:9月9日、村落開発委員会(VDC。最小の行政単位)全体の交流プログラムを開催した。参加者27人は女性の暴力、カースト差別、ダリット女性の教育状況などについて話しあった。以下の問題が確認された。
*因習的な考え方や迷信により、ダリット女性は社会的に非常に傷つけられやすくなっている。
*教育、雇用、保健、開発などの面における資源や機会の欠如により、ダリットコミュニティの発展は遅れている。

 こうした取り組みを通して、女性たちはDVに関する法律について、人権および女性の権利について知識を身につけ、尊厳ある生活を確立させることの重要性を認識した。女性たちは現在、法による解決と、コミュニティの女性たちのエンパワメントのために団結を唱えている。その一方で、解決すべき課題として次のことが確認された。

・社会構造により、テライ地区のダリット女性の問題を表面化させることは容易ではない。多くの女性たちが暴力にあっている。
・女性たちは警察に届け出にいくことを望んでいないし、耐えるしかないと信じている。
・行きすぎだダウリ制度により女性たちは激しい暴力にさらされている。

 今後もこれら取りくみを通して、女性たちのエンパワメントを促進していく。